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筑後という土壌でアートの種を育てる試み『CHIKUGO ART POT』【ARTNEコラム|Social】

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アルトネ編集部
2017/08/18
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■そーまのたらい展
 7月1日(土)より8月27日(日)まで開催の本展には、夏休みに入り多くの親子連れが来場してくれている。九州芸文館で最も広く天井の高い展示室に、矢部川にちなみ楠などの多くの木材で制作された作品が並び、子どもたちが自由に遊ぶことができる空間となっている。関連イベントも多数実施したが、8月20日(日)のレースのワークショップは今からでも参加可能。

※矢部川
 矢部川は、県内3番目に長い61kmの流路を持つ一級河川であり、4市10町2村にまたがり有明海に注ぐ。清流と親しまれる一方で、増水時には氾濫しやすく暴れ川として恐れられてもいた。そのような矢部川の治水・利水事業で最も有名なものが、堤防「千間土居(せんげんどい)」であり、その工事に携わったのが田尻惣馬(たじりそうま)である。

※田尻惣馬
 惣馬は、柳川藩において、普請役として治水・利水事業に大きく貢献したことで知られる。矢部川沿岸築堤「千間土居」の工事では、洪水のときに水流の調査のために「たらい(半切り)」に乗って激流を下り、流れを変えるための刎(はね)を造り、竹や楠などを植えて堤防を強固にしたと言われる。人夫を一切休ませずに「鬼奉行」と恐れられるなど、多くのエピソードとともにその偉業が伝えられる。
惣馬が「たらい」に乗って激流を下った逸話が、kosuge1-16にとって非常に印象的だったということで、そのエピソードを基にした『そーまのたらい展』の企画へと繋がった。

 

■展示作品・イベント紹介


《Tub Go Round!!》

 遊園地でおなじみの遊具「Tea Cup」と「Merry Go Round」をモチーフに、惣馬が川下りに使用したたらい(半切り)に乗り、目が回るような激流を体験できる作品。羽犬(筑後エリアに伝承のある羽が生えた犬)もたらいの周りを一緒に飛び跳ねて応援しているかのよう。自転車動力により、軽快な音楽にのって円形の舞台全体が回転し、羽犬も上下する。たらいと羽犬に大人1名まで合計6名ほどが一緒に乗ることができる。回転する本体の直径は約5m、高さ5mにもなる。大人も童心にかえって楽しんでいる姿が印象的。

 

《キヂキヂマシーン ヤベ!!コース》

 筑後エリアに伝わる玩具「きじ車」を基にしたオリジナルミニカーを走らせることができる巨大なコースを会場内に設営。10mに及ぶコースは矢部川の流れを再現しており、ゴールの有明海までうまくミニカーを走らせられるか何度でも挑戦できる。楠を素材とした木製のミニカーを会場で購入でき、自由に色付けをして組み立てられる。マイカーを持参してのリピーターも多い。

 

photo: MEIJIKAN

《パタパタ羽犬》

 タイヤのついた羽犬を押すとパタパタと羽が動く作品。動く彫刻を連れ出して、展示室から飛び出して芸文館をぐるっと散歩することもできる。

 


「資料展示」
 矢部川に関連する資料を合わせて紹介している。矢部川の風景を描いた地域の画家の絵画、流域の祭りを写した写真、「千間土居」をテーマにした市民演劇の映像や衣装、掘割でヒシの実を採集するためにたらい(半切り)に乗る伝統を伝える小学校のプールでのたらい乗りの映像や、実物のたらい、流域の地図や洪水の記録など。

 

「スタンプラリー」
 街に展開する企画の一つがサテライト会場の設置である。街なかのホテル、セレクトショップ、旧役場に《パタパタ羽犬》を設置して、それぞれのエリアで作品を通じて人や街とのふれあいを生み出せないかと考えたものである。各会場も非常に個性的で、ホテルは、アーティストがプロデュースした部屋や、展示スペースがあり、地域の本をセレクトしたブックカフェのあるホテルMEIJIKAN。セレクトショップは、白壁の長屋が並ぶ城下町の風情が残る九州圏内の伝統工芸などを紹介したり、独自に開発した伝統工芸とのコラボ商品を扱う情報発信拠点でもあるショップうなぎの寝床。旧役場は、白壁長屋などの空き家再生活動の一環で地域の人たちによりリノベーションされている旧八女郡役所。それらを巡りスタンプを集めると、九州芸文館の会場でオリジナルミニカーをプレゼントしている。


 

バスツアー「そーまのたらい号の川下り」

 8月6日(日)に実施したバスツアーでは、都市デザイン専門家のガイドのもと、惣馬の功績である「千間土居」をはじめ、矢部川の堰を巡り歴史を辿る行程だった。地元の参加者に地域のお話を伺うなど双方向に情報交換を行う大変盛り上がるツアーとなった。


 

「Soma’s Tub Race Car づくり」

 7月29日(土)、30日(日)に一人乗り車を制作するワークショップを実施した。木を削り丸太のタイヤを取り付けるハードな車作りに多くの親子連れが参加してくれた。会場はくるめウスと旧八女郡役所という街なかの施設。


 

photo: KOSUGE1-16

「Soma’s Tub Race!!」

 8月20日(日)に実施するレースイベント。7月のワークショップで制作した車を持ち寄り、九州芸文館前の芝生広場で開催する。矢部川をイメージした複数のコースを設定。好きなコースにエントリーしてタイムを競う。車作りのワークショップに参加していない人でも、車の準備があるので自由に参加可能。本展の展示作品や地域の特産品などの豪華賞品を進呈!

 

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