本展は、日本唯一の古代エジプト専門美術館「古代エジプト美術館 渋谷」のコレクションを紹介するものです。国内では質量ともに第一級の内容を誇る本コレクションは、先王朝時代からローマ支配時代まで網羅しており、古代エジプト文化の全貌をうかがい知ることができます。ミイラやミイラマスク、木棺、神殿の柱、ツタンカーメンの指輪といった世界的に貴重な遺物や、当時の生活様式がわかるジュエリーやレリーフなど約200点を展示します。そのほか、過去100年間学術的な調査がほとんどなされてこなかったメイドゥム(マイドゥーム)・ピラミッドの最新調査(2022年)の様子も紹介します。3000年の巨大文明に触れ古代エジプトへの扉が開かれる機会となることでしょう。
古代エジプト人は、自らが存在するこの世界や宇宙は、創世神によって創造されたもので、その後、数多くの神々が誕生していったと考えていました。古代エジプトでは、多くの動物神が信仰されていましたが、これは動物には人間にはない特別な能力を持つことが注目されたためでした。本章では、多様な神々の護符や神像、動物のミイラを紹介します。
古代エジプトの社会は、ファラオ(国王)を頂点とする国家であり、ファラオの下で、人口の約10%にあたるエリート高官たちによって国家は運営されていました。また、長い古代エジプトの歴史において、ファラオたちは、常に絶対的権力を行使していました。本章では、ファラオをモチーフとした像やレリーフ、神殿の柱などを紹介します。
古代エジプトでは、他の地域と比較して、当時の衣・食・住を考える上で多くの資料が存在しています。エジプトの乾燥した気候により、墓に副葬された数多くの品々が朽ちることなく残されました。亜麻製の衣服や下着、履物、装身具、化粧道具なども多く存在しています。また、彼らが食べたパンや果物、野菜、肉なども乾燥した形で残っています。さらには、木製のイスやベッドなどの家具なども遺跡から出土する実物だけではなく、墓や神殿の壁面に描かれた壁画などの図像には、当時の人々の生活を示す多くの場面が描かれています。本章では、ツタンカーメン王の指輪や化粧用容器、ジュエリーなどを展示します。
古代エジプト人は、死後に再生し永遠なる生命を得ると信じていました。そのため、死者の遺体はミイラとして保存されました。最古のエジプトのミイラは、先王朝時代のもので、人工的なものではなく自然乾燥によって作られたものでした。その後、古代エジプトでは、ミイラ作りが盛んとなり、第3中間期(前1070~前664年)には、その技術は頂点に達します。末期王朝時代からプトレマイオス朝、ローマ支配時代にかけても多くのミイラが作られました。本章では、少女のミイラや人型木棺、副葬品などを紹介します。