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乗興舟 幻の若冲版木が縁側に【連載】

2018/11/26 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

開催中の特別展「オークラコレクション」の隠れたエピソードを九州国立博物館の主任研究員、山下善也さんに聞く連載第2回。

大胆な作風で人気の高い江戸時代の日本画家、伊藤若冲。その若冲が京都伏見から大阪天満橋まで、淀川下りの風景を延々と描いた版画がこれだ。長さ11・6メートルもの大作で、桜の版木5枚の表裏に図案が彫られた。ただし現存するのは京都国立博物館の1枚だけだ。
「その版木は16年前に若冲の親類の家で見つかりました。一時期は縁側の床に使われていたらしいです」。山下さんから驚きのトリビアが。えっ、肉筆なら数千万円とも言われる若冲なのに? 国内外で10点ほどしか残っていない作品の版木なのに?

乗興舟(部分)


しかもこの版画、中国から伝わった「石摺(いしずり)」という当時の最新技法が使われている。彫り上げた版木にぬれた和紙を張り、へこんだ部分に紙を押し込んで表から墨を塗る。鮮やかな黒を背景に、くっきり白く浮かぶ木々や家屋。まるで写真のネガフィルムのような味わいだ。
そんな大事な版木をなぜ縁側に? 「不正に複製されないよう、版木を処分した作家は多いんです」。山下さんが京都弁で若冲のものまねを披露してくれた。「家を建てはるんですね。桜のいい版木を使いはったらどないです。どうせ捨てようと思うてましたし」
縦30センチ、横1メートル。残り4枚の版木は、今も旧家の縁側で眠っているかも。

 

=11月15日 西日本新聞朝刊に掲載=

 

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