エキソニモ+YCAM共同企画展
メディアアートの輪廻転生
2018/07/21(土) 〜 2018/10/28(日)
10:00 〜 18:00
山口情報芸術センター[YCAM]
アルトネ編集部 2018/08/20 |
巨大な「メディアアートの墓」の中に複数のアーティストたちが"死"を迎えた作品を展示する――。山口情報芸術センター[YCAM]開館15周年記念企画は、作品の"死"について考え、さらに"転生"させて未来に伝える可能性を模索する展覧会。さまざまな思考を促すこの展覧会の手助けとなるのは、特設サイトに掲載されている多彩なアーティストの生の声かもしれません。
ARTNEでは、さらにこの展覧会を読み解くべく、本展キュレーターであるアートユニット・エキソニモのおふたりと、YCAMの吉﨑和彦さんに"メディアアート"にまつわる問いを投げかけました。質問者は本展アドバイザーで九州大学芸術工学院准教授の城一裕さんです。(編集部)
Q-1. メディアアートとは
今回の展覧会のタイトルに含まれている”メディアアート”という言葉ですが、出展作家の岩井俊雄さん、江渡浩一郎さん、高嶺格さん、藤幡正樹さん、および、本展のアーカイブ監修者の明貫紘子さんを交えておこなわれたオープニングトークでは、作品の死とは、という問いをきっかけに、芸術の社会的な役割、アーティストの意義、という話題が取り上げられていました。この点を踏まえると、メディアアートという言葉の意味は、必ずしも、コンピュータや映像・音響機材などを使用した作品、に限定されるものでは無いのではないでしょうか。ともすれば、この言葉自体も輪廻転生(死ぬ/生き返る)する、とすら思えてくるのですが、オープニングを踏まえた今、各々の捉えるメディアアートとは何か、教えてください。
エキソニモ・千房けん輔 自分の中では、メディアアートとは”メディア批評性を持ったアート”と言う意味なので、コンピュータを使ったアートに限定はしてません。現にエキソニモでは、ペイントであったり、今回の展示にも出しているようなポスターであったり、コンピュータを直接的に扱ってない作品もあります。逆に言えばコンピュータを使っているからといって、メディア批評性がない作品は、テクノロジーアートかもしれませんが、メディアアートとは言えないとも思います。今回の展示タイトルは「アートの輪廻転生」でも良かったのですが、世界的にはあまりメジャーに使われていない”メディアアート”という言葉が、日本国内では便利に利用されているような状況があるということもあって、あえて”メディアアート”と言ってるという部分もあります。
エキソニモ・赤岩やえ 日本では、”メディアアート”とは何か、ということがしばしば議論されるようですが、私にとってメディアアートとは、広い意味でメディアそのものに言及した芸術のことを指すので、それを実現するために、必ずしもコンピュータを使ったりテクノロジーを駆使する必要はないと思っています。ですが、今回はそれを定義するのが目的ではないので、タイトルに含まれる”メディアアート”は、みんなが”メディアアート”と聞いて想像するそれでいいのです。YCAMは、過去15年メディアアートの制作と発表をしてきていますが、多くがコンピュータやテクノロジーを駆使したものです。そういった流れの早い環境下で生み落とされた作品の未来の姿や死生観を炙り出し、この先につないで欲しいという願いも込めて、あえて”メディアアート”と限定した言葉を使いました。
山口情報芸術センター[YCAM]・吉﨑和彦 ”メディアアート”とは何か、という質問に答えるのは難しいですね。展覧会タイトルに”メディアアート”とありますが、この展覧会で扱っている”作品の死とは何か”という問いは、メディアアートというひとつのジャンルにとどまるのではありません。あらゆる芸術作品、ひろくは文化一般についても考えられる普遍的なものです。展覧会の出品されている作品の”死”の理由も、コンピュータや機材の問題に限りません。そのため、この展覧会によって自分の中で”メディアアート”の定義が変わったというわけではありません。
ただ、今回、展覧会の一環として、これまでYCAMの事業に関わったことのあるアーティストを対象に、作品の死の定義や未来の姿についてアンケートを実施したのですが、その回答からメディアアーティストの作品に対する考え方を垣間見ることできました。同時代のメディアテクノロジーを表現手法として扱っていることが多く、そこで使用されている技術が永遠に動くもの、存続するものとして考えていない、という傾向が見られました。そのため、たとえ作品の物質的な要素が失われても、作品を体験した人の記憶や、なにかしらの記録に残っていれば、作品は生きている、また、復活することができる、と考えている人が多かったです。絵画や彫刻を制作しているアーティストに同じアンケートを実施したら、また別の回答が得られるのではないでしょうか。ここで、”メディアアート”のひとつの側面が見えたような気がします。
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