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メディアアートをめぐる3つの応答|エキソニモ+YCAM共同企画展【インタビュー】

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アルトネ編集部
2018/08/20
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Q-2. アーティストたちの声
今回の展覧会では、作り手であるアーティストたちの声に焦点が当てられています。アンケートの回答からは、例えば”作品の死”の捉えかた一つをとっても、アーティストの視点が多種多様だということがわかりますが、展覧会のステートメントにもあるように、現在、世界中の美術館や研究機関でさまざまな保存修復の取り組みがなされている中、なぜアーティストに焦点を当てたのか、改めて、教えてください。

会場にはアーティストたちの言葉が並ぶ。

千房 個人的な感覚から言うと、自身がアーティストであり、ある程度のキャリアを積んできている中で、作品の死について考えさせられる場面が増えてきたと言うのがあり、そんな時に他のアーティストはどんなことを考えているのだろうか、と言う率直な疑問がありました。また、タイムベースドメディア(メディアアートも含む)の保存修復の話を赤岩などから伝え聞いた時に、そこにアーティストの視点が抜け落ちていると言う話もあり、やるべきだろうと感じました。

赤岩 メディアアート(もしくはタイムベースドメディア)の保存修復の問題を調べていく中で、専門的な議論とは全く別の、作り手であるアーティストが考える、作品の未来や終わりのイメージを明らかにしたいと思うようになりました。今回、展示の着地点を試行錯誤する中で、作家へのインタビューやアンケートを行い、そこで投げかけた、”作品の死”や”転生”といったキーワードから、様々な”作品たり得る(たり得ない)条件”というのが見えてきました。そして、作品たり得ない状態の作品、つまり死んだ作品を鑑賞するという体験から、作品や作家のコアに触れることを試みています。アーティストの考える死生観は、保存修復の問題解決にはならないかもしれませんが、ひとつのヒントになるかもしれません。

吉﨑 確かに近年、メディアアートを含むタイムベースドメディアの作品の保存については、美術館や研究機関の専門家の間で盛んに議論されていますし、さまざまな保存の手法が実践されています。しかし、そもそも作品の作り手であるアーティスト自身が作品の未来についてどう考えているのか、聞いてみたかったんです。そして、そこから、既存の考えとは異なる、死んで新たな肉体で生まれ変わる、”輪廻転生”のような飛躍の可能性が見えてくるのではないかと考えました。
また、アーティストであるエキソニモとの共同企画の展覧会ですから、そのほうが多く人の想像力をかきたて、心に響くのではと思ったからです。

Q-3. プラットフォームとしての展開
オープニングトークの際、千房さんから本展覧会をある種のプラットフォームとしても捉えることが出来る、というお話がありました。これまでに、「ドークボット東京」や「インターネットヤミ市」といった活動に携わってきたエキソニモ、「生活者としてのアーティストたち」といった対話の場の構築を試みられた吉﨑さん、各々の立場から、プラットフォームとしての「メディアアートの輪廻転生」ないしは「メディアアートの墓」の展開の可能性についてお聞かせください。

「メディアアートの墓」展示風景

千房 今回、YCAMとの議論の中から、この形式が生まれ、実際に実施に至ったわけですが、今までになかった新しい企画の、あくまで第一弾ということで、今後フィードバックがあると思うし、改良の余地も見えてくるだろうなと想像しています。問題提起としては、想像していたよりも大きなものとなった感覚があるし、今回選んだアーティストとは違ったアーティストでも成り立つものだと思っています。国や地域が違えば、文化や宗教の違いによる死生観も変わってくるわけで、その違いも見てみたい。また、メディアアート以外のアーティストがこの形式をどう解釈するのかも気になります。

ラファエル・ロサノ=ヘメルの《アモーダル・サスペンションー飛びかう光のメッセージ》(2003年)に関する展示。本作品はYCAMが開館したときのオープニング作品。

赤岩 まず、日本国外での展示をぜひやりたいです。インターネットヤミ市もそうですが、こういったプラットフォームは、軸となるアイデアをベースに、開催地の環境や文化に応じて自由に形を変えることができます。そういった点を生かして、様々な地域のアーティストを巻き込んで展開できればと考えています。日本とは違う文化を背景にした、また別の死生観が見えてくるかもしれません。メディアアートの墓に関しては、コンセプトは引き継ぎつつ、形状は、場所や環境に合わせて全く違うものになっていくのも面白いのではないかと思っています。

吉﨑 この展覧会で扱っている"作品の死"という問いは、その人の死生観や文化、宗教にもかかわってくるものです。今回、過去にYCAMの事業に関わったことのあるアーティストという縛りを設けていますが、同じ問いであっても、国や地域が異なれば、展示作品もアンケートの回答もまったく異なるものが出てくるかもしれません。そこに、この展覧会がプラットフォームとして今後展開していく可能性を見ています。

 

撮影:山中慎太郎(Qsyum!)
写真提供:山口情報芸術センター[YCAM]

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