ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信展
2018/07/07(土) 〜 2018/08/26(日)
09:30 〜 17:30
福岡市博物館
伊勢田美保 2018/08/17 |
福岡市博物館で8月26日(日)まで開催中の、「ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信」。『浮世絵』と聞けば、多くの人が葛飾北斎や歌川広重などを思い浮かべると思いますが、鈴木春信は彼らより以前に、浮世絵史上、非常に重要な役割を担った絵師だそうです。
前回の記事では、浮世絵調イラストがSNSで大人気の、山田全自動さんの視点で一緒にめぐりましたが、今回は改めて同館学芸員の佐々木あきつさんにアテンドいただき、会場レポートをお届け!春信展の魅力、たっぷり伺ってきましたよ。
佐々木さん(以下「」内全て):「春信は、多色摺の技術が出てきた時代に活躍した絵師です。今、浮世絵といえば多くの方がカラフルな版画を思い浮かべると思いますが、版画の技術が未熟だった時代には白黒、あっても2〜3色のみの色摺でした。春信は多色摺によって、上流階級が注文するハイカルチャーの絵画から、大衆が買い求める絵画までを広く制作し、圧倒的人気を誇りました。彼の絵のどんな部分が支持されたのか、章ごとに見ていきましょう」
なんだかワクワクしてきました!
プロローグ 春信を育んだ時代と初期の作品
「ここでは、春信が活躍する前の時代の浮世絵を展示しています。最初は『紅絵』と言って、墨で印刷した後に、筆で彩色する形のものでした。これが『紅摺絵』になり、筆で一枚一枚塗るのではなく、版画で色を重ねられるようになりました。とはいえまだ2〜3色だけで、紅色と緑がよく使われる色です」
「一見、沈んだ色味に見えるかもしれませんが、当時の人々が見ていたものは、これが基本でした。まずは、この色をよく覚えておいてください」
ふむふむ、どれも淡い紅色と緑、それに時々黄色があるくらい。これはこれで素敵ですが、確かに少し地味にも見えます。
そして、1章に入ると、春信の登場です。
第1章 絵暦(えごよみ)交換会の流川と錦絵の誕生
「1765年頃、『絵暦交換会』というものが大流行しました。お金持ちの武士や町人が、趣味で職人に『絵暦』という浮世絵を刷らせ、交換する会を催したんですね。商業目的ではないので、採算度外視。そのおかげで、技術もどんどん発展しました。日本で多色摺の版画ができたのは、世界に先駆けること約100年も前のことでした」
これにはびっくり。日本でそんなにも早い時代に多色摺の技術が生まれ、しかもその原動力が趣味だったとは、驚きです!
ちなみに絵暦とは、謎解きカレンダーみたいなもの。絵の中に文字や数字が隠れていて、暦がわかる仕掛けになっています。一カ所見つけて満足していたら、まだまだ他にも隠れていて、これは結構難しいかも。
さらに佐々木さん。
「よ〜く見てみてください。帯の部分にぽこぽこと、凹凸があるのがわかるでしょうか。色摺りした後にわざわざ型押し用の版を押し付けて、模様を浮き出せてるんです。これは分厚い、良い紙じゃないとできないことで、手間もかかりますが、春信の他の絵にも見られる表現です。ぐっと近づいて体を動かして見るほどに、繊細な陰影や、着物の色味、濃淡など、気付くことがたくさんあるんですよ」。
なんて繊細…。これぞ趣味人のこだわり!絵暦交換会は、当時の男性たちが行っていたものだそう。女性のふわりとした手つきや後れ毛、少しだけはだけた服、翻った裾。細部まで丁寧に繊細に描かれ、なんとも言えずセクシーさを感じるのは、凝り性な男性たちがこだわり尽くしたからこそなのでしょう。友人に「これどう、すごいやろ」と見せていた、趣味の会の雰囲気まで伝わってくるようです。
それにしてもずっと見ていられる美しさ…。そして確かに色数もプロローグに比べて格段に増えています!佐々木さん曰く「後の安価な浮世絵では使えないような贅沢な表現」も随所に見られ、一枚一枚に見入ってしまいます。
「『絵暦交換会』は上流階級の趣味の会でしたが、春信による高度な多色摺版画の美しさに目をつけた版元が、版木を求め、制作依頼者の名前や暦を削って一般用に売り出しました。それが、『錦絵(あずまにしきえ)』。「錦織のように美しい絵」ということで当時は東錦絵と名付けて、普及させたそうです」
なるほど、こうして庶民の手にも渡るようになったんですね〜。
第2章 絵を読む楽しみ
次は古典物語や故事の名場面を潜ませた『見立絵』が登場します。これを読み解くにはある程度の知識が必要とされますが、展覧会では解説にちゃんと答えがあるので、ご安心を。当時の人々と同じように絵から読み解く楽しみを感じたい人は、まずはじっくり絵と向き合ってみてください。絵の奥に隠された物語と、絵のイメージの差が大きいほど、「わかった!」と嬉しくなりそうです。
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