特別展 伝教大師1200年大遠忌記念
最澄と天台宗のすべて
2022/02/08(火) 〜 2022/03/21(月)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
2022/03/05 |
特別展「最澄と天台宗のすべて」が九州国立博物館で3月21日(月・祝)まで開催中です。同館の大澤学芸員より、本展の見どころを寄稿してもらいました。仏像の楽しみ方も紹介してもらいましたので、是非チェックしてみてください。
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特別展「最澄と天台宗のすべて」は、平安時代のはじめに天台宗を開いた伝教大師最澄(767~822)の没後1200年を記念するものです。九州の地で天台宗の展覧会が開催されるのは1986年以来36年ぶり、さらに展示品約120件のうち、国宝が24件、重要文化財が68件という、超大規模な展覧会となっています。会場には、心をうっとりさせる美しくカッコよい仏さまがたくさんいらっしゃいます。ここでは展覧会の見どころを、私なりの仏像の見方・楽しみ方を交えながらご紹介します。
フィーリングの合う仏さまを探す~目と目が合ったらミラクル~
60年に一度しか公開されない秘仏、等妙寺の菩薩遊戯坐像(伝如意輪観音)は、その前に立てば言葉を失ってしまうほどに美しい像です。岩の台座に立膝をついた今にも動き出しそうなポージング、流し目の端正な顔立ちは見る人の心を鷲掴みにします。爪が長く伸びた指先の造形も柔らかく繊細で、右足の親指をそっと反り上げる表現は、私たちを救い出すために歩む瞬間を造形化したものです。
たくさんの展示品がある場合、最初からひとつひとつを一生懸命に見ると途中で疲れてしまいますよね。疲れると目と心の扉が閉じてしまいます。ですので、まずは元気なうちに会場全体をさーっとお散歩しながら気の合う仏さまを探します。心を開き感受性のアンテナを張れば、必ず「ビビビッ」とくる仏さまがいらっしゃると思います。出合いを結んだ折には、何も考えずにじーっと、いろんな角度から表情やお姿をご堪能ください。そして仏さまがどんな性格なのか、同じクラスにいたら友達になれるか、何委員をしていそうか、誰々ちゃんに似ているなど想像力を膨らませてみると展示室が一気に楽しくなります。ぜひ会場でベストフレンド仏を探してみてください。
仏像は360度ぐるり
お寺と博物館では仏像を見る環境が全く異なります。お寺では信仰の対象として暗く厳かな雰囲気の中に安置され、お像と少し距離を置いて正面のみ拝観することが多いです。その一方で、博物館では比較的明るい空間の中で、お像との距離も近く、正面、斜め、横、そして時には背面も見ることができます。延暦寺の聖観音菩薩立像は正面のみならず背面から見た立ち姿もとても美しく、九博では360度ぐるりと回りながら鑑賞できる空間を作りました。ちなみに私は仏像を見るときに次のような順番で、ぐるぐる回りながらビビビポイントを探します。
顔→全体(プロポーション)→細部(衣やしわの流れ、文様など)→全体→顔
仏像の顔は正面だけでなく、斜め、横から見るとそれぞれに印象が変わります。チラシではその美しさを皆様にお伝えしたく、あえて横顔をメインビジュアルにしました。おでこから鼻筋、唇からあごにかけてのラインは仏像鑑賞の醍醐味です。また腰をひねった躍動感溢れるプロポーション、そして衣のしわの先端など細かい部分を観察し、仏師がどんな思いでノミに魂を込めて彫り上げたかを想像するのです。そうすると数百年という時を超えて、仏師と対話しているような感覚を楽しむことができます。
仏像に親しみを持ってもらうための工夫
仏像の造形のルーツは、日本からアジア、そしてギリシア・ローマまで辿ることができます。この壮大でファンタジー感溢れる仏教美術の魅力を、どうしたら子どもたちや若い世代の人たち、そして博物館にあまり行ったことがない人たちに伝えられるだろうか。そんなことを日々考えながら、今回の特別展を作っていきました。
今回の展覧会でもっとも頭を悩ませたのが、登場人物のほとんどが、名前が二文字のお坊さんであるため(髪型もおなじ)、知識がないとキャラクターの区別がつかない点でした。そのため各章の導入部に人物相関図をしめし、図を使うなどして内容がパッと目に入るような工夫をしています。
また一目で展示品の特徴をとらえられるよう、各作品の解説にキャッチフレーズを添えました。真面目なものから、ちょっとくだけたものまでありますので、会場で疲れた方はキャッチフレーズだけを見て回るのもよいかもしれません。
九博から日本全国へ―天台の旅ここに始まる―
こちらは私がこの展示で伝えたいメッセージです。展示をご覧になった方は、東北から九州まで広まった天台宗のネットワークの規模に驚かれるはずです。展示会場での仏さまとの出合いは始まりにすぎません。展示会場を出たあとから天台の旅は始まるのです。会場で巡り合った仏さまがどこで守り伝えられたのか、ぜひ現地にも足を運び、最澄や弟子たちの願いに思いを馳せてください。
(九州国立博物館 大澤信)
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