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【コラム】画商・洲之内の眼 宮城県美コレクション展から<4完>先駆者 広がり、響きあう作品群

2025/04/18 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 洲之内徹が生涯をかけて形成したコレクション。一括収蔵している宮城県美術館とはどんな場所だろう。

 1981年、仙台市に開館し、東北ゆかりの作品や日本近現代美術、ドイツ近代美術などを収集してきた。現在大規模改修中のため、本企画展が実現した。同館の収蔵品を代表するこの2作も含まれている。

 日本近代洋画の先駆者、高橋由一が宮城県の依頼で描いた「宮城県庁門前図」(1881年)は、同館開館のちょうど100年前の制作。高橋といえば、半身をそがれてつるされた「鮭」(国重要文化財)が代表作として知られる。質感や重厚さをリアルに伝える作風で、明治初期、迫力ある写実画を開拓した。そんな彼が後半生を捧げたのは、東北地方の風景画だ。

キャプション

 宮城県や山形県などの依頼で、かの地の光景を次々と絵にとどめた。「門前図」もその一つ。だが1945年、宮城県庁は戦災で焼失した。今は絵の中にのみ、往時の威容が残される。

 一方、宮城県美の西洋美術コレクションには、もう一人の「先駆者」がいる。抽象画の創始者、ヴァシリー・カンディンスキーだ。

 同館は開館準備中の78年、彼の素描17点を皮切りに収集を始めた。美術館づくりのブレーンにカンディンスキー研究の専門家がいたこともあり、彼とその周辺からの収集を深めた。

 「『E.R.キャンベルのための壁画No.4』の習作(カーニバル・冬)」は、モチーフの意味を隠し、形や色彩で「内なる響き」を表現している。

ヴァシリー・カンディンスキー
「『E.R.キャンベルのための壁画No.4』の習作
(カーニバル・冬)」
(1914年、宮城県美術館蔵)

 さまざまな「眼」を通して、仙台の地に集められた作品群。それらが醸し出す響きの中に、しばし身を置いてみよう。

(児玉珠希が担当しました)

▼響きあう絵画 宮城県美術館コレクション 5月11日まで、久留米市野中町の久留米市美術館。日本近現代美術やドイツ近代美術など宮城県美収蔵の74点を展示。一般千円、65歳以上700円、大学生500円、高校生以下無料。月曜休館(祝日は開館)。同館=0942(39)1131。

=(4月12日付西日本新聞筑後版朝刊に掲載)=

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