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「谷川俊太郎 絵本★百貨展」レポート② 谷川さんが広げた絵本の豊かさ/福岡アジア美術館

2024/06/03 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 現在、福岡アジア美術館で開かれている「谷川俊太郎 絵本★百貨展」では、谷川俊太郎さんが手がけた絵本作品を多才なクリエイターたちが映像、朗読や⾳、立体物などで表現していて、絵本から飛び出してきた世界が広がる楽しい展覧会です。自身も谷川さんファンという編集者でライターの浅野佳子さんが3回に分けて見どころをレポートします。

レポート①はこちらから
レポート③はこちらから

いろんな手法で表現された絵本の世界

 谷川俊太郎。日本で最も知名度のある詩人ということに、異論のある人は少ないはずです。一方、今回の展覧会の主役は、「詩人」ではなく「絵本作家」谷川俊太郎。実は谷川さん、これまでに200冊もの絵本を作ってきました。

 会場では面白い仕掛けがたくさん。谷川さんの言葉のキレが炸裂した一冊『ことばあそびうた』は、なんとけんけんぱ遊びに転生。会場にているシャンシャンとなる、ペルーの民族楽器を手に持って、「かっぱかっぱらった/か置かれっぱらっぱかっぱらった/とってちってた」とけんけんしていると、言葉のリズムとからだがシンクロしてきます。この言葉、おもしろくて口が楽しい!

大人も子どもも、思わずけんけんぱ。『ことばあそびうた』より

 入り口付近で心を奪われたのが、壁面に大きく映し出されたアニメーション。自分自身こそが「まるのおうさま」だと自称するお皿やシンバルや円を描いて飛ぶトンビが、次々に登場してはまるを描いていきます。グラフィックデザイナー粟津潔さんと組んで作られた、1971年のモダンな一冊『まるのおうさま』を、現代の映像作家・坂井治さんがアニメーションにしたものです。

 次々と画面に現れる◯が目に楽しく、朗らかでリズミカルな音楽に思わず体が動きます。「なるほど! ここは絵本をからだじゅうで感じる場なのだ」と説明されなくても理解できるイントロダクションです。

鮮やかな色で展開されるシュールなお話に魅了される『まるのおうさま』

 こんな感じで繰り広げられる展示の数々。紙の本に息づいていた谷川さんの言葉と、アイデアに触発された画家の応答が、空間に飛び出しています。本展覧会のキュレーター・林綾野さんによれば、「谷川さんは絵本を、物語を語るものでなく、絵や写真の力を借りて、言葉だけでは表現できないものを表すチャレンジをしている」とのこと。

 ページをめくるたびに少しずつ情報が増えていく〝つみあげうた〟を描いた『これはすいへいせん』。この形じゃないと表現できなかったに違いないアイデアが満載で、谷川さんが広げた絵本の豊かさに巻き込まれてワクワクしてきます。
 

どんどんお話が積み上がっていく『これはすいへいせん』

 わたしが一番好きなのは、長新太さんと取り組んだ絵本『えをかく』。壁一面に、長さんのユーモラスな絵が大きく展開されていて、横にずれながら鑑賞していると、朗読の声が聞こえてきます。谷川さん本人の朗読です。「まずはじめに じめんをかく つぎには そらをかく…」。そうして、谷川さんの声に寄り添うように、大地が描かれ、生き物が出てきて、子どもが登場して、家が建って、夢が描かれます。絵巻物のように少しずつ世界が現れる展示は、この作品のテーマ・創世記とリンクしていて、この作品の前で一番長く過ごしました。

谷川さんの朗読を聞きながら、世界が生まれる様子を目の当たりにする。『えをかく』より

 美術館で、「目」だけじゃない鑑賞体験ができる貴重な機会です。ぜひ詩人・谷川俊太郎に魅せられてきた人は、絵本作家・谷川俊太郎に会いにおでかけください。

 また、会場内特設ショップでは、谷川俊太郎さんの言葉を身近に感じることができるアイテムや、絵本の言葉と絵を合わせて楽しめるユニークなアイテムが人気です。

人気絵本『もこ もこもこ』や『まるのおうさま』のオリジナルグッズも(撮影:長谷川明)

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◆谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)
詩⼈。1931年東京⽣まれ。1952年第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。1962年「月火水木金土⽇の歌」で第四回⽇本レコード⼤賞作詩賞、1975年『マザー・グースのうた』で⽇本翻訳文化賞、1982年『⽇々の地図』で第三十四回読売文学賞、1993年『世間知ラズ』で第一回萩原朔太郎賞など受賞・著書多数。詩作のほか、絵本、エッセイ、翻訳、脚本、作詞など幅広く作品を発表している。

◆「絵本★百貨展」で紹介する絵本
『絵本』写真・谷川俊太郎 的場書房 1956(2010復刊 澪標)
『まるのおうさま』絵・粟津潔 福音館書店 1971
『こっぷ』写真・今村昌昭 福音館書店 1972
『ぴよぴよ』絵・堀内誠一 ひかりのくに 1972 (2009 復刊 くもん出版)
『ことばあそびうた』絵・瀬川康男 福音館書店 1973
『とき』絵・太田大八 福音館書店 1973
『もこ もこもこ』絵・元永定正 文研出版 1977
『えをかく』絵・長新太 新進 1973 (1979 復刊 講談社)
『せんそうごっこ』絵・三輪滋 ばるん舎 1982 (2015 復刊 いそっぷ社)
『なおみ』写真・沢渡朔 福音館書店 1982
『うつくしい!』写真・塚原琢哉 日本ブリタニカ 1983
『ままですすきですすてきです』絵・タイガー立石 福音館書店1986
『ぽぱーぺ ぽぴぱっぷ』絵・おかざきけんじろう クレヨンハウス 2004
『おならうた』絵・飯野和好 絵本館 2006
『かないくん』絵・松本大洋 ほぼ日 2014
『これはすいへいせん』絵・tupera tupera 金の星社 2016
『へいわとせんそう』絵・Noritake ブロンズ新社 2019
『オサム』絵・あべ弘士 童話屋 2021
『ぼく』絵・合田里美 岩崎書店 2022
『ここはおうち』絵・junaida ブルーシープ 2023
『すきのあいうえお』写真・田附勝 ブルーシープ 2023
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◆展覧会概要
「谷川俊太郎 絵本★百貨展」
会期:2024年4月27日(土)〜6月16日(日) 
観覧時間:9時30分〜18時(毎週⾦・⼟曜⽇は20時まで)※最終⼊場は30分前まで
休館⽇:⽔曜⽇
会場:福岡アジア美術館 7階 企画ギャラリー(福岡市博多区下川端町3-1 リバレインセンタービル7階)
詳細はこちら https://faam.city.Fukuoka.lg.jp/exhibition/19885/

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