松浦史料博物館開館70周年記念・九州国立博物館開館20周年記念特別展
平戸モノ語り ─松浦静山と熈の情熱
2026/01/20(火) 〜 2026/03/15(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
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アルトネ編集部 2026/02/02 |
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九州国立博物館で1月20日から開催されている特別展「平戸モノ語りー松浦静山と熈の情熱」。現在の長崎県にあった平戸藩の松浦静山と熈、親子二代にわたるコレクションを紹介する展覧会です。
このコレクションは膨大で、現在もなお調査が進められている貴重なものですが、松浦静山・熈のコレクションにまつわる物語は、知れば知るほど面白いものばかりです。本展の中核的な展示品の所蔵先である松浦史料博物館の岡山芳治館長に、3つの作品をセレクトしていただきました。
本展の主人公である松浦静山公といえば、まずは『甲子夜話(かっしやわ)』。1821年から1841年まで松浦静山によって書き綴られた一大エッセイです。会場にはその一部と、『甲子夜話』に書かれたエピソードなどが紹介されています。
岡山館長が紹介したいエピソードが「一富士 二鷹 三茄子の真相」です。
『甲子夜話』巻五「奥津鯛 一富士二たか三茄子の事」によると、「一富士二鷹三茄子」は、もともと“縁起が良いものの順位”などではなく、
一番「高い」のは富士山
次に高いのは足高山(あしたかやま)
三番目に高いのが、(駿河の)初物の茄子の値段
だと徳川家康が言ったことが記されています。
本来の「たか」は、鷹(鳥)ではなく足高山(愛鷹山)という地名で、それがいつの間にか鳥の「鷹」に誤解・転訛されたそうです。松浦静山は、この誤解がさらに広まったことについて、「世間ではこれを『目出度いもの』として絵に描き、もてはやしているが、誤りも甚だしい」と憤っています。
少し偏屈な(もとい、生真面目な)人となりがうかがえる、ちょっとユーモラスな逸話です。会場では、『甲子夜話』に書かれたこうした逸話も紹介されています。
2番目に紹介するのは「宮本武蔵像」。岡山館長も、初めてこの画像を見たときに「これが宮本武蔵?」と思ったそうです。まるで頭が爆発したかのような、強烈なインパクトのある姿で描かれています。
松浦静山は、お抱えの相撲力士である二代目・緋縅(ひおどし)が模写した図をさらに模写し、自ら賛を加えてコレクションに加えたそうです。
3番目に紹介するのは「陣太鼓」。豊臣秀吉が引き起こした朝鮮出兵(文禄・慶長の役)に松浦家が出兵した際に伝来した品です。
この陣太鼓について岡山館長は、「中国や韓国でも類似の陣太鼓を見たことはありますが、これほど保存状態が良く、絵柄が残っているものは、ほとんど見たことがありません」とのこと。
この太鼓自体も圧巻ですが、それを記録するために松浦静山か熈の時に描かれたのが『家世修古図』というカタログです。いや、この『家世修古図』にかけられた情熱は並大抵ではありません。精緻に写し取られ、色彩や質感までも残そうとした二人の思いが、ひしひしと伝わってきます。
松浦父子は、文物の保存や収集に情熱を注いだ点では思いを同じくしていますが、岡山館長によれば「実は案外、仲は良くなかったのではないかと思います」とのこと。
江戸を中心に、松平定信や幕閣大名とさまざまなネットワークを築いた松浦静山は、病気などを理由に参勤交代による平戸帰参の免除を幕府に度々願い出ていたり、熈にはまあまあな隠居料を要求するなどなかなか唯我独尊的なタイプです。
一方の熈は、平戸に滞在することを好んでいたといいますし、子供の頃から大好きで熱心に学んでいた能を「お前を能楽師にするつもりはない」と父に止められており「自分は能を見学したり能楽師と親しくつきあったりしているくせして」と不満を漏らしていた記録も残っています。
頑固な父に辟易する跡取り息子の姿が、目に浮かぶようです。
なんとも人間くさい、この大名コレクション。一堂に会して展覧することはなかなか難しく、非常に貴重な展覧会となっています。3月15日までの開催。どうぞお見逃しなく。
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