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古い街並みと新しいアートの融合「博多旧市街まるごとミュージアム」【レポート】

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木下貴子
2018/11/21
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春に開催された「まるごとミュージアム」の第2弾が、早くもこの秋に開催された。前回は福岡城跡地という広い敷地を舞台にしたが、今回は、博多旧市街といわれるエリアに7名・組のアーティストの作品を展示。題して「博多旧市街まるごとミュージアム」。10月31日~11月4日の5日間、中世に由来する歴史・伝統・文化が数多く伝わるこの場所で多彩な現代美術作品が展開され、新旧が混在するユニークな光景も生み出された。

 

まるごとミュージアム実行委員会事務局(福岡市と福岡市文化芸術振興財団)が主催し、春に続いて今回も福岡アジア美術館(以下アジ美)が連携し、日本とアジア、そしてニュージーランドのアーティストたちの作品が紹介された。東は博多駅近くにある出来町公園から西は福岡アジア美術館まで、広範囲にわたって作品が点在し街歩きとともに楽しめる。まず、アジ美から訪れてみた。

アジ美7階では、今年5月から7月にかけて福岡で滞在制作をおこなったモー・ジアチン/莫佳青(中国)の映像作品《魔法の薬》と、その撮影セットが展示されていた。

カラフルな映像セット

 

モー・ジアチン《魔法の薬》2018年
近未来的なキッチンで、これまた近未来的な衣装をまとった女性が、ガラス玉や宝石のような物質を男たちに給仕するという奇想天外な映像作品。地元・福岡の人々が出演

 

モー・ジアチン《魔法の薬》2018年

 

セットに入ることもでき、撮影で使われた小物も見ることができる。派手派手しい色あいで「人工的」なものを印象づけるこの作品は、我々の周りも人工的なもので溢れかえっていることを示唆する。

映像セットより

 

買物する人、観光する人、キャナルシティ博多と博多リバレインを行き来する人など、たくさんの人が行き交う川端通商店街。ここに展示されたチュンリン・ジョリーン・モク(香港)の《店を見る》は、同商店街で営まれる16店舗の日常を緩やかな視点で描いた映像作品だ。

チュンリン・ジョリーン・モク《店を見る》2015年

作品はジョリーンが2015年に福岡に3カ月間滞在し、制作したもの。完成後はアジ美で発表されたが、作品の舞台である川端通商店街での展示は今回が初となった。おなじみの商店街が題材のもともと親しみある作品だったが、ここで展示されることでいっそうそれが深まる。鑑賞後、作品に映っていたお店を見てみるという二重の楽しみ方もできた。

《店を見る》で最初に登場されていた門田提灯店

川端通商店街からすぐの冷泉公園へ。遠目からでも分かるほどの巨大な作品、鈴木康広による《空気の人》が、青空の下、さも気持ちよさげに芝生の上に横たわっている。

鈴木康広《空気の人》2018年

近づくとかなり大きい。なんでも全長18mだそう。大きいけど空気の人なので、風が吹いてはゆらゆら揺れる。強風や大雨など悪天候の場合は屋内での展示に切り替えるなどの対策も練られていたそうだが、折よく展示期間中は好天に恵まれ、見にきた人たちや公園に居合わせた人たちを楽しませていた。

 

《空気の人》の周りをはしゃぎながら走る子どもの姿など、ほのぼのした光景もみられた


 

大博通り沿いに建つ龍宮寺は、開基年は不明だが非常に歴史が古い。鎌倉時代に人魚が捕えられ埋葬されたという伝説が残るお寺で、その人魚の骨は今も本堂に安置されている。ここで展示されたのは、ヴー・キム・トゥー(ベトナム)と、とよだまりさの2人の作品。
 

山門に飾られたトゥー制作のランタン


トゥーは9月よりアジ美に2カ月間滞在したなか、何度も龍宮寺を訪れたそうだ。水、漁業文化、人魚伝説といった要素がインスピレーションとなったという、滞在中に制作した光のインスタレーション《水とみる夢》を発表。大小10点以上のランタンには、八女和紙とベトナムの手漉き紙が使われた。

ヴー・キム・トゥー《水とみる夢》2018年

 

ヴー・キム・トゥー《水とみる夢》2018年
下からのぞくと、魚の鱗のドローイングが。解説には、「これらのドローイングは、私自身の創作と日本の伝統的な文様を融合したものとなっています」と書かれていた

 

とよだは龍宮寺に伝わる人魚伝説をモチーフに絵画《人魚の見た世界》を制作。「人魚はここにくるまでどんなところにいたのだろう。」「たくさんの不思議の中で、いまも大切にみんなの中に生きている。」など人魚に想い馳せて描かれた。

とよだまりさ《人魚の見た世界》2018年
奥に建つ観音堂の隣に展示


 

今回の「博多旧市街まるごとミュージアム」は、同じエリアで同時開催された「博多旧市街ライトアップウォーク2018」と連携。日暮れからライトアップされる作品や、夜間のみ鑑賞できた作品もあった。最後の目的地、出来町公園は夜間鑑賞がいいと聞きつけ、あらためて暗くなってから訪れた。
※鈴木、トゥー、とよたの作品も夜間ライトアップ展示があった

出来町公園

久留米市在住の地元作家・牛嶋均による《山のカタチ》。スウェーデンで昨年発表したシリーズの新作で、夜の展示にあわせ、特殊照明作家・市川平が制作した照明を装備したものだ。

牛嶋均《山のカタチ―帰結的な相似性の研究》2018年
輪っかをいくつも組み、富士山のような均整のとれたフォルムをつくりだした

 

内側に装備された市川による特殊照明が、360度回転しながら作品を照らす。それによって動き、変形する影がおもしろい


マルチメディア・スタジオ、ストーリー・ボックス(ニュージーランド)による、20フィートの海上運送用コンテナ9本を使った《Are Atoms Alive?》は、屋内には収まらない大規模なインスタレーション。野外シネマのように夜の暗さを利用して映像が上映された。

ストーリー・ボックス《Are Atoms Alive?》2018年
ある科学者の研究者の部屋からはじまる、壮大な宇宙のパノラマ、地球上での慌ただしい日々、美しいミクロの世界などをめぐる7分間の物語

出来町公園では、来春にリニューアルオープンする福岡市美術館(市美)をPRする期間限定のカフェもオープンしていた。

福岡でも屈指の人気を誇る「マヌコーヒー」がコーヒーを提供。立ち寄ると香ばしいコーヒーのかおり

 

カフェではポスターやチラシ、映像で市美のリニューアルをアピール。映像でお披露目された市美の外観や内観をみると、3月のオープンがいよいよ待ち遠しくなった

 


広範囲にわたって数多くの作品を、しかも昼と夜で違う印象で楽しむこともできた「博多旧市街まるごとミュージアム」。歩きながら博多の街の魅力を再発見することもでき、実に盛りだくさんだった。

しいていえば会期が5日間という短さと、作品によって見られる日程や時間帯が異なっていたのが分かりづらかったこと。筆者の周りでも、見逃した作品があったという声をいくつか聞いた。野外展示あるあるの課題であるが、一方で、期せずしてアートに触れられ楽しめた人も多かったのではないだろうか。次はまた春に開催か?「まるごとミュージアム」のさらなる展開に、期待したい。

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