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「白馬のゆくえ」展みどころ④ 小林萬吾を通して日本洋画を楽しむ3

2020/07/22 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 久留米市美術館で開催されている特別展「白馬のゆくえ 小林萬吾と日本洋画50年」(~2020/8/23[日])では、洋画黎明期に学んだ小林萬吾(1868−1947)の50年におよぶ画業と、彼がめぐりあい、ともに日本洋画の歴史に名を刻んできた個性豊かな洋画家たちの名作の数々を紹介しています。本展のみどころを、久留米市美術館の方々から、数回にわたって紹介していただきます。

1回目はコチラ
2回目はコチラ
3回目はコチラ

*****

 萬吾ら白馬会の画家たちが描いたのは、夕景ばかりではありません。光の表現に敏感な画家たちゆえ、室内にさし込む光にも関心をもっていたのは当然です。

白瀧幾之助《稽古》1897年 東京藝術大学

 1896(明治29)年、萬吾と同じく、開設されたばかりの西洋画科3年級に編入学した白瀧幾之助は、早くも翌年、第2回白馬会展に大作《稽古》を出品しました。そこに描かれるのは、師匠と思しき女性と稽古に励む4人の少女。一人は遅れてきたのでしょうか、戸をそっと開け、中に入ろうとしています。大きく開けられた窓には簾が垂らされ、簾を通してさし込む光が室内を明るく照らしています。窓の外に見えるのは、隣の家の壁であり、少しだけ空がのぞいています。室内にいる6人は、逆光に照らし出されているにもかかわらず、表情豊かに表現されています。

小林萬吾《物思い》1907年 東京藝術大学

 萬吾の《物思い》は、それから10年後の制作になります。白馬会展ではなく、第1回文展に出品されました。そこには、一本の柱にもたれて立つ和服の女性が描かれています。読みかけの本を手に、物思いにふける様子です。「近所の煙草屋の娘さんが時折家に遊びに来て居たが、或夏の日読書で縁先に立つて居たのを見て画興が湧いた」という自作解説から、彼女が立つ場所が縁側であることがわかります。柱は屋内空間と屋外空間を分ける役目も果たしています。背後からさし込む光は、顔に陰影をもたらし、彼女の心のひだを表現するのに効果的です。

 夕景にせよ、さし込む光にせよ、柔らかい光の表現に苦心していた萬吾ですが、やがて屋外の強い光にも関心をもつようになります。1911(明治44)年から約3年におよぶヨーロッパ体験がそのきっかけになったと言えましょう。

(久留米市美術館副館長兼学芸課長 森山秀子)

※第5回につづきます

 

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