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「白馬のゆくえ」展みどころ①「駆けてゆく駿馬たち-とある洋画家の見た美術史」

2020/07/01 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 久留米市美術館で開催されている特別展「白馬のゆくえ 小林萬吾と日本洋画50年」(~2020/8/23[日])では、洋画黎明期に学んだ小林萬吾(1868−1947)の50年におよぶ画業と、彼がめぐりあい、ともに日本洋画の歴史に名を刻んできた個性豊かな洋画家たちの名作の数々を紹介しています。本展のみどころを、久留米市美術館の方々から、数回にわたって紹介していただきます。

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 私たちは、学び、何かを発表することを子供のころから当たり前のように繰り返してきました。月曜日の登校や、人前でのスピーチなど、億劫だったり、緊張したり。しかしこの春、学校や集会がストップしてみると、そのような日常が決して自然に最初からあったものではないことを改めて考えさせられました。

児島虎次郎《登校》1906年 高梁市成羽美術館


 たとえば、明治の頃には、油絵を学ぼうとしてもそれは簡単ではなく、技術の取得は個々の努力にかかっていました。自由な作品発表の場、体系的な教育機関となると1896(明治29)年の「白馬会」展、東京美術学校西洋画科の発足あたりが一つ目安となります。この展覧会と美術学校はどちらも同じ年に、フランスから帰国して間もない黒田清輝を中心に動き出しました。

黒田清輝《木かげ》1898年 ウッドワン美術館


 彼のまわりには盟友・久米桂一郎をはじめ俊英が集まり、実制作と教育に様々に参加します。その中の一人に、今回の展覧会で再評価したいと考えている画家・小林萬吾もいました。

小林萬吾《渡舟》1909年 香川県立ミュージアム


 香川県に生まれ、原田直次郎らに師事。その後、黒田の助手として第1回白馬展から出品し、やがて東京美術学校の教授となった人物です。自身技量のある画家であり、素描の教育に定評がありました。また、交遊の幅も広く、彼の目は、初期洋画界半世紀の流れを全て見つめてきたと言っても過言ではありません。

 白馬会に集った画家たちの多くは、発表の場を官展や光風会などに移しつつ、その後も研鑽を続けます。留学した者も、そうでない者も、それぞれの表現様式の獲得に生涯を捧げました。かつて学生だった者たちは教える側へ。学校や画塾で後進を育成し、また、故郷に帰って地方画壇を形成することで西洋由来の油絵を日本の文化に浸透させていきます。さまざまに展開し、熟成していく洋画の歴史。若き白馬たちが時によりそい、時に前後しつつ、やがて思い思いの方向に駆け抜けてゆく光景を思わせます。

藤島武二《匂い》1915年  東京国立近代美術館


 今回の展覧会は、画家・小林萬吾が見つめた美術の流れという一風変わった切り口で、近代洋画史を彩ってきた名品の数々を紹介します。このような時期だからこそ、美術館の穏やかな時間の中で、ホッと息をつくひとときをお過ごしいただきたいと思っています。(久留米市美術館 学芸員 佐々木奈美子)

 

※第2回につづきます

 

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