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喜多村みかさん、福岡市で個展「TOPOS」

2020/09/09 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 広島、長崎の被爆から75回目の夏を迎えた今年も、広島の原爆ドームや長崎の平和祈念像などの様子がテレビや新聞で報じられた。われわれは反射的にそれらの映像、画像を被爆地、鎮魂といった言葉と結びつけてしまいがちだ。

広島、長崎テーマ 距離をとって接近

 福岡市で開催中の写真家、喜多村みかさん(38)=東京=による長崎、広島をテーマにした個展「TOPOS」は、ちょっと異なる感覚を抱かせた。被爆地という意味を背負ってしまった場所と距離感があるからだろうか。

原爆ドームを収めた作品「rose and the dome」(上)
など約30点が並ぶ福岡会場

 「TOPOS」は場所の意。メインビジュアルの一枚は、原爆ドームを小さく遠景に配す。手前にはバラ園。濃緑にポツポツと咲く赤、黄、ピンクの花が印象的だ。平和祈念像を写した作品でも、その切り取り方は変わらない。帰り支度をしているのか、気もそぞろそうな修学旅行生の姿の奥に像がじっと腰を下ろす。

 「ルーツをたどりたい。最初はそんな気持ちで撮り始めたんです」

 喜多村さんは福岡県糸島市で生まれ育ったが、中学時代の3年間を長崎市で過ごした。2014年から撮影を始め、同じ被爆地である広島にも行った。とはいえ、作品として発表するのには迷いがあった。「メッセージ的なものだけが強く前に出てしまい、見方を狭めてしまう」と危惧したからだ。

 17年夏、岡山市の夫の実家で見た平和式典のテレビ中継を撮影した。自身はその場所にいない。それでも写真、画面を通して、その場所について考えることができると気付いた。

 「これは広島、長崎だけど、それ以外にも思いをはせるべき場所はある。思いを巡らせ続けるための方法として、外に出しても良いと思った」

 会場の作品を眺めていると「境界」を意識させられる。どれも光と影が強調され、窓越しの、また壁に映った風景もある。そもそも写真自体、レンズの向こう側とこちら側が内在する。

 彼女はテーマの外側を意識してきた写真家である。何かを伝えようというより、伝えようとする時にこぼれ落ちる何かを記録してきた。今回の個展も、強いテーマと距離をとることで逆説的に接近を試みたのかもしれない。 (小川祥平)
 

=9月4日付西日本新聞朝刊に掲載=


喜多村みか個展 「TOPOS」
会期:2020年8月8日(土)~9月13日(日)
   月曜~水曜休廊
会場:LIBRIS KOBACO
  (福岡市中央区大手門3丁目2-26 田中ビル 401号室)

 

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