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学芸員の目 よみがえる正倉院宝物展<上> 川畑 憲子さん(専門・漆工) 九博のみで展示の「宝」も

2021/05/28 LINE はてなブックマーク facebook Twitter
木内省古が手がけた「模造 木画紫檀双六局」=奈良国立博物館蔵

 優れた技術で精巧に作られた奈良・東大寺の「正倉」に伝わる宝物の再現模造を集めた本展は、令和への改元と天皇即位を記念し、全国を巡る展覧会である。

 名だたる工芸家が手がけた宝物の模造は、天平の遺香を醸す貴重な品ばかりだが、夜光貝と玳瑁(たいまい)による豪華な装飾が特色の「模造 螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」は特に注目される。五絃琵琶の模造は明治と平成の時代に作られたが、今回初めて二つを並べて展示しており圧巻だ。

 また、色鮮やかな七宝で飾られた「模造 黄金瑠璃鈿背十二稜鏡(おうごんるりでんはいのじゅうにりょうきょう)」や、多彩な樹種のモザイクが美しい「模造 木画紫檀双六局(もくがしたんのすごろくきょく)」など、正倉院宝物の白眉をほうふつとさせる品々が並ぶ。

 九州国立博物館では、他の会場で見られない作品も出品されている。たとえば、「模造 木画紫檀双六局」を手がけた木工芸家の木内省古(1882~1961)が、1952年に木工芸の「木画」と象牙の装飾「撥鏤(ばちる)」の技術で、国から無形文化財の選定を受けた際に納めた「木画技術記録」(東京国立博物館蔵)は、当時の木画技術を知る上で大変重要な資料である。

 木工の名家、木内家の3代目である省古は、宝物の修理や模造製作に従事しながら作域を広げ、古来の技術の保存と発展に努めた。

 本展では、正倉院宝物の精巧な模造を通じて華麗な天平の美と技を満喫していただくとともに、模造を製作した工芸家や伝統技術についても知っていただければ幸いである。

 九州国立博物館(太宰府市)で開催中の特別展「よみがえる正倉院宝物」の見どころを、同館学芸員3人が各自の視点で解説する。

=(5月24日付西日本新聞朝刊に掲載)=

 

●特別展「よみがえる正倉院宝物 再現模造にみる天平の技」
 6月13日まで、太宰府市の九州国立博物館。奈良・正倉院宝物の精巧な再現模造を展示。一般1600円など。問い合わせはNTTハローダイヤル=050(5542)8600。

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