
九州国立博物館開館20周年記念
特別展 九州の国宝 きゅーはくのたから
2025/07/05(土) 〜 2025/08/31(日)
九州国立博物館
2025/08/12 |
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長崎県美術館では、現在、戦争をテーマにした展覧会「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」が開催されています(~9/7)。被爆80年に当たる本年、本企画を担当した同館学芸員・森園敦さんに全3回にわたり連載いただきます。
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長崎県美術館では現在、「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」展を開催中です。本展は当館の開館20周年を記念すると同時に、被爆80年という節目の年に合わせて企画されました。
他の学芸員と協議を重ねるなかで、当初は長崎原爆のみをテーマとすることも考えましたが、やはり被爆地にある美術館として打ち出すには、現在の世界情勢にも訴求するものでなくてはならない、という考えに至りました。そして原爆はもちろんのこと、それを引き起こした戦争をテーマにすることにしたのです。
そこで浮かび上がったのが、時代を超えて普遍的なメッセージを放つフランシスコ・デ・ゴヤの版画集〈戦争の惨禍〉でした。
我々はこの版画集を今回の展覧会の軸に据えたのです。ここでは、1808年から1814年までスペインで起きた対仏独立戦争の様子が82枚の作品に描かれています。それ以前の戦争をモティーフとした絵画では、為政者たちの英雄行為が通常表されましたが、ゴヤは実際の戦場で起きる血なまぐさく悲惨な様子を赤裸々に描きました。ゴヤは自らの体験や伝聞をもとに図像に表しましたが、最大の関心は特定の事件を描くことよりもむしろ、それらを通じて露わとなる人間の暴力性、残忍性、絶望や狂気など、戦争が持つ普遍性へと向かったと思われます。そのため制作から200年を経ているにもかかわらず、全く古さを感じさせないどころか、不安定な世情も相まってますます存在感が高まっています。この版画集で描かれていることは、現在行われている戦争で実際に起きていることなのです。
そして展覧会のハイライトになるのは、プラド美術館から借用したゴヤの油彩画《死した七面鳥》、及びゴヤに帰属されている《巨人》でしょう。ゴヤは首席宮廷画家という華やかな立場にいながら、戦争と人間の暴力を寓意的に描き出したのです。
展覧会ではゴヤを基点に、そこから抽出したテーマによって7つの章を構成しました。「人間の暴力、そして狂気」、「身体に刻まれた傷」、そして「飢えと困窮」などのテーマに合致する国内外の作品をピックアップし、展覧会を組み立てました。なかでも藤田嗣治の作戦記録画《〇〇部隊の死闘―ニューギニア戦線》や、丸木位里・俊の夫妻が描いた長崎原爆をテーマとした作品、そしてナチスによる占領下のパリで描かれたジャン・フォートリエの人質シリーズなどは必見でしょう。
長崎県美術館が戦争をテーマにこれだけ大規模の展覧会を開催するのは、20年間で初めてのことです。この機会を見逃すことなく、ぜひご来館ください。
長崎県美術館学芸員・森園敦
2025/07/05(土) 〜 2025/08/31(日)
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2025/06/28(土) 〜 2025/08/17(日)
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2025/07/06(日) 〜 2025/08/17(日)
大分県立美術館(OPAM)