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長崎県美術館「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」連載(中)

2025/08/24 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 長崎県美術館では、現在、戦争をテーマにした展覧会「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」が開催されています(~9/7)。被爆80年に当たる本年、本企画を担当した同館学芸員・森園敦さんに全3回にわたり連載いただきます。
「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」連載(上)はこちら
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 今回の展覧会は、スペイン美術を標榜する長崎県美術館ならではの試みとして、戦争をテーマに数多くの作品を描いたゴヤに始まり、そこからピカソへと展開させました。ピカソはスペイン内戦中の1937年4月に起きた、世界で最初の無差別爆撃といわれるゲルニカ爆撃をモティーフとして、畢生の大作《ゲルニカ》を驚くほどの短期間で仕上げました。今回の展覧会では、特別出品として大塚オーミ陶業株式会社が1997年に制作した《ゲルニカ》の複製陶板が美術館のエントランスに展示されています。また展覧会場では、ピカソが同年に制作した版画《泣く女》(ソフィア王妃芸術センター蔵)も見ることができます。この作品は《ゲルニカ》の準備素描から派生してシリーズ化したものの一つです。

 そしてゴヤを起点にピカソを経て、そして長崎へ進んでいくという流れを展覧会の中では作り出しました。

 1945年8月9日、長崎に新型爆弾が投下されたという情報は、博多を拠点とする西部軍に当日の昼過ぎに伝えられます。西部軍は現地視察と記録を目的に、報道部に所属していた写真家の山端庸介、画家の山田栄二、そして詩人の東潤をただちに長崎市内に派遣することを決定しました。

山端庸介《岩川付近の県道から北方を望む(岩川町)》1945年8月10日 ゼラチンシルバープリント 長崎原爆資料館蔵 ©撮影者・撮影日・撮影地/山端庸介・1945.8.10・長崎市

 山端らはまだ熱の冷め切らない長崎の街を約半日かけて歩き回り、それぞれ異なる表現媒体によって克明に記録をしていきました。山端はこのとき117枚の写真を、そして山田は29枚のスケッチを残しています。彼らは長崎の原爆を最初に表現した芸術家たちだったといえるでしょう。第6章「私は見た-目撃者としての視点」では、彼ら3人の仕事を皮切りに、原爆の目撃者たる被爆者たちの作品について検証します。

 そして時代は移り変わり、被爆8年後の初めての長崎訪問をきっかけに描かれた丸木位里・俊夫妻による長崎原爆をモティーフとした屏風、さらには被爆16年後に長崎を訪れ、その後、約半世紀にわたり長崎を撮り続けた東松照明らの仕事も紹介しています。

東松照明《片岡津代さん1/本原町》1961年 ゼラチンシルバープリント 長崎県美術館蔵
© Shomei Tomatsu-INTERFACE

特に被爆者をまるで伴走するかのような視点で同じ被写体を撮影し続けた東松の写真群は、長崎の「終わらない戦後」を浮き彫りにしました。東松の、長崎で果たした仕事の大きさは、瞠目すべきものがあります。

 戦後80年を迎えた今日、戦争の現場で何が起こっていたのか、芸術家たちの作品を通して今一度考えてみてはいかがでしょうか。

長崎県美術館学芸員・森園敦

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