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日本近代建築の巨匠、前川國男(くにお)の生誕120年を記念したイベントが11月16日、設計を手がけた福岡市美術館(同市中央区)で開かれた。前川の下で同館の設計から施工まで携わった橋本功さん(79)が登壇。竣工から半世紀近くを経ても色あせない建築に込められた思想について語った。
前川は1905年、新潟市生まれ。東京帝国大建築学科卒業後、渡仏して世界的建築家ル・コルビュジエに師事し、帰国後の35年に独立した。86年に81歳で亡くなるまで、東京都美術館や国立国会図書館、熊本県立美術館や同県立劇場など数多くの公共建築を残した。
現在は前川建築設計事務所所長を務める橋本さんによると、前川は「建築はファッション(一過性の流行)ではない」と述べ、素材に対する深い理解や技術を身に付けた上で縦横に駆使することが大切だと考えていたという。
福岡市美術館が設計された70年代は、円熟期に入った前川が公害問題を受けて環境を重視するようになっていた時期。外壁の劣化を防ぐため、タイルをコンクリートと一緒に固める「打ち込みタイル工法」を導入。建物も圧迫感をもたらす一つの箱ではなく、正方形の空間を回廊でつなげた書院造りのようなデザインで周囲に溶け込ませた。それまで近代建築の重要な要素である平らな屋根を貫いてきた前川が、勾配のある屋根を初めて採り入れたのが福岡市美術館だった。以後の設計でも次々と勾配屋根を採用したといい、橋本さんは「大濠公園の美しい風景に合うデザインを考える中で前川の素直さが現れた。一種の呪縛から解放されていったのかなと思う」と分析した。
79年に落成した同館は2019年に大規模なリニューアルが施された。中山喜一朗総館長は「前川の建築意匠を守りつつ、美術館に親しみやすさを求める時代に合わせた施設を目指した」と説明。橋本さんは「『未完の建築』―つまり建築は利用者や運営者によって育てられ、長く生きることで完成するというのが前川の考えだった。皆さんが育てるものなんです」と呼びかけた。(川口安子)
=(12月2日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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