上川伸展　「壁とともに」

※ご来場前に、ホームページで詳細をご確認ください。

　上川伸は、1958年に産炭地として栄えた福岡県直方市に生まれました。間もなくして燃料の主役であった石炭が石油へと移り変わる「エネルギー革命」が起こり、幼・少年期を衰退する炭鉱とともに過ごしました。

　彼の代名詞ともいえる「THE WALL」シリーズは、その時に目の当たりにした巨大な建造物、錆びた鉄、朽ちかけたコンクリートの記憶から創り出されています。また、第2回谷尾美術館大賞展で大賞を受賞し、「堅実な構成力」を備えていると称賛された技術は、第40回安井賞展で次席の佳作を受賞したことからもその評価を揺るぎないものとしています。

　近年手掛けている新シリーズ「MOSS GARDEN」は、中学生の頃から心酔していたロックミュージシャンの同タイトル曲や、作庭家の重森三玲の代表作である京都・東福寺庭園（北庭）に着想を得て制作されました。装飾性に重きを置かれた本シリーズは、重厚な構築物を描く「THE WALL」シリーズとは異なり、和紙を使用した柔らかな素材と有機的な線、幾何学的な形の調和を編み出す、新しい試みがなされています。

　本展では、初期作品から「THE WALL」シリーズに至る約20点の油彩作品、新作を含めた約30点の「MOSS GARDEN」シリーズを紹介し、作品に秘められた作家の人生に迫ります。