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【コラム】木で創るリアル 「驚かせたい」 キボリノコンノ展 福岡市科学館 作者コンノさん 「細部まで観察」「会話生まれれば」

2025/10/14 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 お菓子や生卵をモチーフに、木彫りで本物そっくりの作品を生み出すアーティスト、キボリノコンノさんの展覧会「キボリノコンノ展 食べたい!木彫りアートの世界」(西日本新聞社など主催)が、福岡市中央区の市科学館で開かれている。じっくり観察しないと見分けがつかないほどリアルな作品は、どのようにして生まれるのか。作者キボリノコンノさんに、狙いや見どころなどを聞いた。(文・写真 佐藤桂一)

「さわってみよう!」のコーナーで、「つままれた豆大福」を不思議そうに持ち上げる子ども。
見た目だけでなく、粉っぽい手触りも感じられる
さまざまな作品を作り出す両手を見せるキボリノコンノさん

―木彫りアーティストになったきっかけは。
「コロナ禍(2021年)に家でできる趣味になればと、最初に作ったのがコーヒー豆です。工作が得意だったし、コーヒーを飲んでいるとき、木で豆を作るとそっくりになりそうだなと思って。最初はSNSに投稿して、いろんな人との交流が増えていくのがすごくうれしかった。今でもそういう気持ちです」

―なぜ木彫りなのか。
「木での創作はリスクが大きい。粘土と違って折れやすく、彫りすぎると形を戻せない。ただそこをうまく使うと、木だからこそできる表現があって面白い。硬いのに柔らかく見えたりとか。それが魅力です」

―溶けかけた氷や生卵などは一部が透明に見える。
「友達の『透明な物を作って』というむちゃぶりがきっかけ。無理だと思ったけど、みんなを驚かせたくて、氷を思いつきました。少し溶けている様子などで時間の経過を表現できたら面白いなと。透明な部分はニスでツヤを出して、最後に絵の具で白いハイライトを描いてるぐらい」

透明な部分もリアルに再現した「溶けかけの氷」

―創作に一番時間がかかった作品は。
「お吸い物です。着想から完成まで1カ月ぐらいかかりました。湯気を描くだけでも、ブラシを30本くらい試しました。化粧用ブラシも買い集めて、どれが一番湯気っぽくなるのかを探しました」

リアリティーあふれる「お吸い物」。お椀の中に湯気も見える

―アイデアの源は。
「みんなが知っているものを題材にします。特に食べることが好きでこだわりが強いので、食べ物の細かい部分まで観察しています」
「子どもからお年寄りまで、幅広く来てほしいし、1人でも楽しめます。これまでの展覧会で、知らない人同士が話していることがありました。『おいしそう』みたいな独り言から、隣の人との会話が生まれる。これが僕が本当に作りたかった世界。作品を間近で見ることでコミュニケーションが生まれるよう、展示棚を低くしたり、作品を触ることができるコーナーを作ったりしています」

チョコレートがとろける瞬間の「フォンダンショコラ」
かつお節や青海苔も精密に再現された「たこ焼き」



―一番のお気に入りは。
「クイズコーナーです。全部で12問。たくさんの煮干しの中から木彫りの煮干しを探すなど、僕のリアルな作品と皆さんとの勝負。全問正解されないように考えているので、すべて正解するのは100人中、1人出るか出ないか。かなり難しいと思います」

―自分でも作ってみたいという人にアドバイスを。
「上手に作ろうと思わないこと。途中で作るのに飽きても、それも個性。角張ったリンゴがあってもかわいいし、目や口を書いてキャラクターにしてもいい。作る楽しさや、自分なりのアイデアを考えて創作するのが一番。そこから可能性が広がると思います」

立方体の木材がリンゴになっていく制作過程も展示されている

-福岡にちなんだ作品をつくる可能性は。
「福岡に初めて来たので、いっぱい食べようと思ってます。食べるとアイデアが湧いてくるかも」

開幕日にデモンストレーションを行い、会場を盛り上げるキボリノコンノさん(手前)

▼キボリノコンノ展 食べたい!木彫りアートの世界 11月9日まで、福岡市科学館3階企画展示室。入場料は一般1300円、小・中学生600円、未就学児無料。火曜休館。西日本新聞イベントサービス=092(711)5491(平日9時半~午後5時半)。

=(10月9日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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