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瞬間、全力疾走の積み重ねがここにある 作者の渡辺航さんインタビュー!「超!弱虫ペダル展」

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アルトネ編集部
2024/11/11
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会場に再現された総北高校の部室前で写真撮影に応じる渡辺航先生

 10月31日から大丸福岡天神店で開催中の「連載15年記念 超!弱虫ペダル展 福岡ステージ」。作者で漫画家の渡辺航先生が11月10日、トークショー&ライブドローイングのため来場されましたので、インタビューを敢行。
 渡辺先生の本展にかける思いと作品制作に関するお話をお聞きしました。


―今回、原画を中心にした展覧会は九州では初の開催となりますが、その展覧会への意気込みをお聞かせください。

渡辺:作品の原画は出版社でも取扱を特に慎重に扱います。今回は出版社から15周年を記念して原画を展示したいというオファーをいただき、開催することができました。原画は描き終えたら出版社に渡しますので、自分でも第1回(2008年)掲載の原画を16年ぶりに見て、自分でも感じるものがありました。「あーっ、こんな風に描いていたのか」と。自分なりにこだわって描いた部分や、修正を加えた場面とか。今見るとあっさりとした線だけど、きちんと表現できているなと感じました。

渡辺:改めて思うのは、作品のエピソードや、描いた場面はその瞬間にしか描けないということ。自分では、今の絵の方が上手く描いているように感じているし、良い絵を描くためを日々精進しているけれど過去の名場面をそのまま再現する事はできない。

―16年ぶりに自分の作品を見て、当時の自分になんて声をかけますか。もう少しこうしたらどうかというアドバイスのようなものは。

渡辺:今だと違った描線の描き方をするなとか、別の表現をするなとか感じるところはあるけれども、表現したい根底の部分はちゃんと伝えていると思う。今の自分も当時の自分を見習う必要がある(笑)。

―それでは、タイムマシーンに乗って過去の自分に逢えるとしたら「お前は頑張ってたなー」と声をかけてあげたいということですね。

渡辺:そうそう。「こんな表現の方法もあるんだな」という感覚はあっても否定することはない。おそらく、その瞬間は全力で描いていたから、後悔とか、こうすれば良かったということは無いんじゃないかという事だと思います。
 そういう意味では、この「超!弱虫ペダル展」には、15年間の一瞬一瞬を、全力で打ち込んで描いた表現の全てが記録されているといっていいです。ネタも絵も絶対出し惜しみしないように全部出してきた。それが全てここにあります。

渡辺:「弱虫ペダル」を描き始めた時はインターハイ1年目までは何としても描き切ろうと思っていました。ネタも絵もすべて出し切ろうと考えていた。そして2年目を迎えた時「まだ描くネタがある。だから続けようと思った。いわば全力の積み重ねで現在がある。その瞬間の積み重ねを会場で体感してほしいと思います。

渡辺:また、展示されているのは雑誌やコミックサイズに縮小されていない原画。ここでしか見る事ができない、いわば世界で一番大きい「弱虫ペダル」の絵。最近はタブレットを使ってデジタル画面で描く作家が多いが、ペンで紙に直接描くからこその緊張感、一回切りの緊張感が絵に残る。そうした感触を感じ取ってほしいと思います。
 もちろん、真波の羽の再現とか御堂筋のオブジェとか、作品の世界を楽しんでいただける工夫も各会場で凝らされています。

クラウドファンディングで実現した御堂筋の立体作品。会場で大きさを体感してほしい

―先ほど福岡会場にキャラクターのライブドローイングを行っていただきました。この作品は福岡会場でしか見る事ができませんので、アピールしておきたいと思います。

会場の壁面にはライブドローイングで描かれた作品が。会場でぜひ探してみてほしい

話は変わりますが、ARTNEは展覧会やアート中心のメディアですのでお聞きできればと思いますが、渡辺先生が作品づくりに影響を受けた作家や漫画家がいらっしゃればぜひ教えていただければと思います。

渡辺:鳥山明先生が心の師匠です。小学校2年生の時に友だちの家で読んだ『Dr.スランプ』の第2巻が衝撃的だった。単行本を読んだのはその時初めてで、一人の作家の作品を連続して読むという体験が凄いショックだった。「こんな作品を描きたい!」という衝動が漫画家を志したスタート。『Dr.スランプ』のおまけ部分の描き込みとかもすごく好きです。サービス精神で細部まで描き込んであるところが大好きですね。その他には高橋留美子先生の作品。『るーみっくわーるど』という短編集が好きで、いつか自分でもあんな短編集を作りたいと思います。

渡辺:あと、しげの秀一先生の『頭文字D』。あの作品の疾走感にはすごく影響を受けました。車が地面の上を走っている絵で、「本当にタイヤが接地している!」と読者に思わせることの凄さ。あの感覚を自分も再現したいというのはある。しげの先生と一度お会いする機会があって、「キャラクターが自転車に乗って走っている感覚がちゃんと表現されているね」と仰っていただいて。もう、めちゃくちゃ嬉しかったです(笑)。

―確かに、しげの先生の作品の疾走感と弱虫ペダルには共通性があるかもしれませんね。
 最後の質問ですが、渡辺先生も漫画家で独り立ちされるまでずいぶんご苦労があったとお伺いしました。将来漫画家やクリエイターを志す若者にアドバイスがあればお願いいたします。


渡辺:自分の可能性に蓋をしないでほしいと思う。そして「自分の道はこれだ」と考えた時には道筋を調べ過ぎない方が良いとも思います。自らの思いに添って行動して、その人なりの発見や出会いを探した方が得るものが大きいと思う。調べてわかる道筋はその発表した人なりの道筋であって、あなたの道筋とは絶対に違う。自分の熱量が「いける」と感じたら、行動した方が良いと思います。

 

 お話を伺って、渡辺先生の熱く、そして誠実な人柄が『弱虫ペダル』の世界に反映されているな、と実感しました。15年間の全力疾走を感じる事ができる「超!弱虫ペダル展 福岡ステージ」は11月25日まで開催しています。お見逃しなく。

(アルトネ編集部)

会場には10日のトークイベントで描いたドローイング作品が展示されている


詳細は展覧会公式HPをチェック

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