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【ニュース】芹沢高志『別府』新装版 刊行

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アルトネ編集部
2021/02/09
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 現在開催中の個展形式の芸術祭「in BEPPU」の前身として、2009年から2015年にわたって三度開催された『別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」』。この芸術祭のコンセプトブックとして、2012年に総合ディレクターの芹沢高志が書き下ろした『別府』が装いも新たに刊行されました。

 再刊に際し、福岡を拠点に活動するカラマリ・インクの尾中俊介がデザインを一新。別府出身の写真家・草本利枝が捉えた別府の風景を複層的に配置した表紙の幻想的な佇まいは、手に取った読者を本書の舞台となる「魔術的な港町」へと静かに誘います。

 本書の特徴の一つは、芸術祭のコンセプトブックでありながら、虚実織り交ぜ綴られた紀行文学の体裁をとる、という実験的な試みだったことです。

 ディレクターを務めた男が、次回に向けた迷いを抱えながら、何かを捜しにひとり別府を訪れる。彷徨い歩き、出会った幻想的な風景や人、出来事に導かれながら、次回芸術祭のコンセプトの輪郭が形を成していく……。コンセプトが一方的に語られることはありません。著者が身体を通して出会い、感じ、思考を巡らしたこの軌跡を追体験することで、読者のなかで、まちを舞台にした芸術祭の目指すものが、かりそめに立ち上がってくるのが本書の特徴です。

 著者の芹沢は、大学で数学と建築を学び、環境計画の仕事に従事した後、バックミンスター・フラー『宇宙船地球号操縦マニュアル』をはじめとするエコロジー関連書籍や、ブルース・チャトウィンなどの紀行文学の翻訳を手掛けてきました。そして、P3 art and environmentという組織を主宰し、蔡國強をはじめとするアーティストたちと出会い、いつしかアートの力でその土地や環境の秘められた可能性を解放するプロジェクトを国内外で展開するようになります。

 環境計画からアートの現場に越境しながらも、一貫しているのは、私たちと環境の関係、精神と風景(ランドスケープ)の関係への強い関心です。『別府』でも、その眼差しはまず風景に向けられます。そして、風景に触発されながら、これまで出会った映画のワンシーンや書物のことば、旅の記憶。そして帯広での芸術祭『デメーテル』や横浜トリエンナーレでの現場のエピソードなどを手がかりに、芸術とまち、芸術と環境についての思考が紡がれていきます。本書は、私たちひとりひとりとまちや環境との関わり方について、これまでの経験から培われた著者の考えがまとめられた一冊であると言えるでしょう。

 「別府。湯の上に浮かぶ魔術的な港町。 あまりの美しさに、一瞬、この眺めは鶴見岳の夢ではないのかと思えた。 数十億年の時のなかで、火男、火女の両神が見る、うたかたの夢ではないのかと......。次に別府は、私に何をさせるのだろう?」(本書より)


●著者のことば
 本書は第二回目の別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」の時、実行委員会から限定的に出版したもので、その性格上、増刷もできないまま、在庫がない状態が続いていました。しかし考えてみれば、これはある芸術祭の報告書ではないし、より本質的に、アートが持つ力、そして場所が持つ力を発見していく方法について、それまでの自分の経験をすべてまとめたものでした。取り替え不可能な自分という存在、取り替え不可能なその場所という存在。その両者の思いもかけない遭遇が、魔術的な瞬間を生み出していきます。これは自分の肉体の彷徨の記録ですが、同時に精神の彷徨の記録でもあります。新型コロナウイルス感染症が世界的に広がり、ますます「生きていく実感」を感じにくくなっている今、どうしてもみんなに読んでほしいと考え、再度出版に踏み切りました。

芹沢 高志

 

●著者プロフィール

 

 

 

 

 

 

 


芹沢 高志(せりざわ・たかし) 
環境計画家、アートプロジェクト・ディレクター
P3 art and environment 統括ディレクター。http://p3.org
1951 年生まれ。神戸大学理学部数学科、横浜国立大学工学部建 築学科卒業後、磯辺行久、ハーヴィ・シャピロによって設立されたシンクタンク (株) リジオナル・プランニング・チームで生態学的土地利用計画の研究に従事。その後、東京・四谷の禅寺、東長寺の新伽藍建設計画に参加したことから、89年にP3 art and environmentを開設。99年までは東長寺境内地下の講堂をベースに、その後は場所を特定せずに、さまざまなアートや環境関係プロジェクトを展開。著書に『この惑星を遊動する』(岩波書店、1996年)、『月面からの眺め』(毎日新聞社、1999年)。訳書にバックミンスター・フラー『宇宙船地球号操縦マニュアル』(ちくま学芸文庫、2000年)、ピーター・マシーセン『雪豹』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2006年)、ケネス・ブラウアー『宇宙船とカヌー』(ヤマケイ文庫、2013年)などがある。

●書籍情報
仕様:並製/四六判変型/ 192頁 
価格:1,600円+税
発行日:2020年11月20日
発行元:ABI+P3
発売元:P3 art and environment 
ISBN:978-4-904965-13-9 
詳細:https://www.abip3publishing.org
購入方法:P3オンラインショップやamazon、全国の書店で注文可能
*P3オンラインショップ(https://p3shop.base.ec/items/35524002)から『別府』を購入すると、『ABI+P3ミニブックレット  芹沢高志+港千尋[対談]五感をほぐす温泉文学「別府」』を同封して発送中。*ブックレットの在庫がなくなり次第終了。


●関連情報
・ミニブックレット 芹沢 高志+港 千尋[対談]五感をほぐす温泉文学『別府』
『別府』刊行に際して、著述家・写真家、ABIディレクターの港千尋を迎え対談を行った。
『別府』が生まれた経緯などについて語り合った前半部分はホームページで公開中。
https://www.abip3publishing.org

・芹沢高志『別府』出版記念トーク
https://www.youtube.com/watch?v=cTqeh72nPW4
地域と向き合う芸術祭のつくり方を綴った本書を起点に、著者と『混浴温泉世界』総合プロデューサー山出淳也が、これからの芸術祭のあり方やアートの役割について語り合った。上記URLから視聴可能。

・梅田哲也 イン 別府『O滞』
会期:2020年12月12日(土)〜2021年3月14日(日)
会場:別府市内各所
鑑賞無料・予約制
主催:混浴温泉世界実行委員会
詳細:https://inbeppu.com/

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