国立カイロ博物館所蔵
黄金のファラオと大ピラミッド展
2017/07/08(土) 〜 2017/08/27(日)
09:30 〜 17:30
福岡市博物館
伊勢田美保 2017/07/19 |
約2か月限りの特別な展覧会が始まった。福岡市博物館で8月27日(日)まで開催中の「国立カイロ博物館所蔵 黄金のファラオと大ピラミッド展」。世界最大の古代エジプトコレクションを誇る国立カイロ博物館から、選りすぐりのおよそ100点をそろえて、ファラオとピラミッドの魅力に迫る展覧会だ。
初日7月8日(土)にはオープニングセレモニーと、古代エジプト考古学の第一人者であり本展を監修した吉村作治先生の講演会が開催され、展示にまつわるさまざまな話が披露された。こちらを前情報として会場に行けば、注目の展覧会をさらにディープに楽しめること必至!ということで、アルトネではセレモニー&トークショー、展示会場潜入の2回にわけてレポートをお届けする。
セレモニー冒頭、福岡市博物館の有馬学館長は、「巨大なピラミッドが多く作られた、約4500年前のエジプト古王国に関わる史料がこれだけ数多く展示されるのは非常に珍しい。古代エジプトの世界に想像力の羽を広げて楽しんで。」と挨拶。
展示に協力したエジプト・アラブ共和国考古省大臣秘書官バーセム・ジハド博士は、「この展覧会の開催自体がエジプトと日本の二国間の信頼関係を表す。これをきっかけに、より多くの方にエジプトを訪れていただきたい。」と期待を込めた。
続いては、吉村作治先生のトークショー。
事前申し込みをしていた多くの人が福岡市博物館講堂に詰めかけた。
吉村先生は、1966年にアジア初となるエジプト調査隊を組織。現地に赴いて以来、51年目となる現在も発掘調査の第一線で指揮している。御年74歳の今も現役バリバリ。「85歳まではやりたい。発掘って本当に面白い!」と目をキラキラさせながら、これまで数多く行ってきた、ミイラや棺などの発掘にまつわるエピソードを披露した。「鮮やかなブルーのミイラマスク※を発見した時は黒い目が青い目になったよ。あ、これ笑うとこね」とジョークも度々。
※2005年1月に吉村先生率いる調査隊によって発見された3800年前の未盗掘ミイラ「セヌウ」の青いミイラマスク
そしていよいよ本展の話に。
まず、今回の展示の中で何より注目すべきは「アメンエムオペト王の黄金のマスク」。黄金の板1枚を叩き出して作られたファラオのマスクで、なんと世界に3つしか存在しないうちの1つが本会場に展示されている。これに関してはぜひ、吉村先生のコメントをそのままご覧いただきたい。
「あれはすごいですよ。見る箇所によって表情が違うのです。笑っているところ、ムッとしているところ、普通の顔、悲しい顔。実は向かって右側の頰がちょっと盛り上がっていて、近づいてマスクの右端から見れば鼻が出て見えるけど左端からだと頰が見える。子供が二人いたとして、左端から見た子が『鼻が低い』と言えばもう片方の子は『鼻が高い』と言う…なんてことも起こる。そういう見方をしないと面白くない。」
「すなわち、あれを作った職人の意図なんです。王様は美味しいものを食べて女性を侍らせて、いいものを着て…と思われがちだけど、『一人の人間』として色々な表情があるのだというのを見せたかったのだと思う。」
そして実際にピラミッド建造に使われた道具の展示にも話が及んだ。
「あんなので作ったの?と思われるかもしれない。普通のありふれたエジプトの『農民』が、あの世で王様と一緒になれるように、また一生懸命に働けばお給料がもらえるから…というような思いで作った。俗に言われるような、優れた技術者が最先端の技術で作ったのではない。奴隷が作ったわけでも、ましてや宇宙人が作ったわけでもない。普通の人間がコツコツ、時間をかけて作り上げたのです。輝かしい一面だけじゃなく、そういうところもぜひ見てもらいたい。」
会場ではこのように、ピラミッドを建てたファラオや王家の女性、貴族に関わるさまざまな像や装飾品のほか、建造を支えた一般人の生活を感じられる展示も多くあるそう。ピラミッド建造法やその技術にも迫れるのも、本展の見所の一つだ。
さて、次回レポートでは、トークショーでの吉村先生の言葉を胸に、展示会場に潜入。そこにはまさに4500年前のエジプトが広がっていた…!こちらもぜひお楽しみに!
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