江口寿史展
EGUCHI in ASIA
2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館
2020/06/04 |
作品はそこにあるのに、展示会場は設けられているのに、見に行けない。新型コロナウイルスの影響で、美術館や画廊が相次いで長期の臨時休業に入ったことにより、もどかしい光景が各地で広がった。一方、現在の状況を逆手にとった実験的試み「無観客展」も始まっている。アートに触れる場所や生で鑑賞する行為の意味を問うている。
福岡市中央区薬院にある現代美術ギャラリー「IAF SHOP」で「非/接触のイメージ」が「開催中」だ。福岡を拠点にするアーティスト斉木駿介、名もなき実昌が企画した。
会場が既に休業していた4月16日に始まった。キャラクターをモチーフに絵画を制作する名もなき実昌と、アニメーションやネット上のイメージを風景や静物に組み合わせて描く斉木の作品を出品している体裁だが、実際には会場に立ち入ることはできず、展示スペースは囲われている。インターネットでも会場内写真は明示せず、両作家がSNSに投稿する画像などを頼りに展示の様子を想像する他はない。
延期や中止をせず、無観客開催に踏み切ったのには理由がある。コロナ拡大前から準備していたメイン作品が、にわかにオンライン化が進んだ現状に対し、図らずも批評的だったからだ。それは2人がそれぞれのキャンバス上に、互いの作品を映像として投影しながら描く「オンライン合作」。コロナ禍の「新しい日常」に向けた実験とも取れるが、会わないために生じる誤差も盛り込まれ、現状への懐疑的な目線とも解釈できる「作品」だ。
自分たちが予定期間に展示をすることで、運営的に苦境に立つギャラリーを助けたいとの思いもあった。アートの営みを国や自治体が守ってくれないなら、自らで守るしかない。2人にとってオンラインによる作品発表は簡単だが、あえて実際の展示を見せないことで、ギャラリーや美術館という空間の意味をあらためて問いかけている。
福岡県の緊急事態宣言解除に伴い、6月4~7日に、展示を公開するという。鑑賞者は「開催中なのに見られない」期間に想像力を働かせた分だけ、展示のリアルさを余計に体感できるだろう。
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美術家の神園宏彰が福岡市博多区店屋町のアルタスギャラリーに持ち込み、同ギャラリーのディレクターでもある峰松宏徳と企画した「非接触の3人展 沈黙の中のエクリチュール」。3人の作家が、ウェブページへ絵画を中心とする作品画像を投稿した、完全な「バーチャル展覧会」だった(第1章=4月23~30日。第2章=5月15~25日)。
ギャラリー内は空っぽ。壁に作品を掛けた加工写真が日々公開された。簡易的な擬似鑑賞だが、いずれは同じ構成で実際の展示も開催したいという。バーチャル展示では、作品サイズなど詳細情報の記載が省かれており、実際の展示が実施されることで初めて、鑑賞者がパソコンやスマホの画面で触れた情報との差を確認できることになるという趣向だ。
教科書に載るような名画を初めて見たとき、大きさや質感が想像と違い、驚くことがある。圧倒されるにしろ、裏切られるにしろ、実物を前にした時に、自分の中のイメージが塗り替えられる体験は美術鑑賞の大事な要素の一つで、ギャラリーや美術館はそれを提供するために欠かせない空間なのだ。生で見られない展覧会が逆説的にそう訴え掛けているように感じた。(諏訪部真)
=6月3日付西日本新聞朝刊に掲載=
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