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「白馬のゆくえ」から <上>【連載】

2020/08/11 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 「白馬のゆくえ」では、小林萬吾(1868~1947)を軸に、明治から現代までの日本洋画の歩みを紹介している。西日本新聞の記者が、美術館の学芸員に見どころを聞き、2回に分けて紹介する。

出会い/黒田が持ち込んだ光

 記者 香川県生まれの萬吾は20歳で上京、原田直次郎に弟子入りしました。萬吾の「芝増上寺」は写真のように精緻です。

小林萬吾《芝増上寺》1892~93年 愛媛県美術館

 学芸員 当時の洋画は、寺や神社といった日本的な題材を、陰影を強調した暗い色調で描くのが主流でした。そこに1893年、フランスから黒田清輝と久米桂一郎が帰国し新風を吹き込みます。

 記者 黒田の「読書」は明るく柔らかい印象です。女性の顔がほんのり赤いのは、ブラウスに反射した光のせいでしょうか。

 学芸員 光を繊細に表現する技法も、本を読む女性の自然な姿を描くのも、当時は斬新で、萬吾をはじめ若い画家たちに衝撃を与えました。95年、萬吾は黒田に弟子入りし、日本洋画の変革期に立ち会うことになります。

黒田清輝《読書》1891年 東京国立博物館 Image: TNM Image Archives

変革/想像かき立てる物語

 学芸員 日本洋画に印象派風の明るさを持ち込んだ黒田清輝と久米桂一郎は1896年に洋画団体「白馬会」をつくります。この年、東京美術学校に西洋画科ができ、若い画家が自由に絵を描きはじめます。

 記者 西洋画科の教授から学生に転じた和田英作の卒業制作「渡頭の夕暮」は、遠景に夕焼けや山、近くに岸辺が。光と影がきれいです。岸の少年は何を指さしているのか。人々は何かを待っているのかな。

和田英作《渡頭の夕暮》1897年 東京藝術大学

 学芸員 絵の中にドラマを生み、見る人の想像をかき立てるのも、黒田が教えた洋画の特徴です。

 記者 小林萬吾の「渡舟」は、岸を目指す舟を描いています。船頭に農民、商人、大工。草を水につけて遊ぶ少女と、少女の帯をつかむ女性。老若男女ばらばら。物語を感じます。

 学芸員 萬吾は、いろいろな性格や境遇の人を寄せ集めた「人事趣味」を描こうとしたと手記に書いています。後年、自身の画塾「同舟舎」で、多様な出自の若者を育てました。この絵とのつながりを感じます。

小林萬吾《渡舟》1909年 香川県立ミュージアム

=7月25、26日西日本新聞朝刊に掲載=

 

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