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ロートレックと136人の画家展 連載⑤アルフォンス・ミュシャ「ノエル1896:『イリュストラシオン』誌、1896年クリスマス号の表紙」

2020/12/21 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

希望と幸福の新しい年

 19世紀末のパリは、街中が石版画の鮮やかなポスターや印刷物に彩られ、印刷工房の石版画技術が進歩し、芸術表現的にも作家が満足できるレベルになっていった。

 さまざまなポスターの登場で、それらをコレクションする人たちも現れる中、1894年末に発表された演劇ポスターで大変な人気となったアルフォンス・ミュシャ(1860~1939)は、魅力的な女優の容姿と才能を大型の作品に表現した。

ノエル1896:「イリュストラシオン」誌、1896年クリスマス号の表紙

 今回紹介するのは、イリュストラシオン誌のクリスマス特集号で彼が特別に描いた挿絵。1896年から97年へと変わる時の流れを、中央の青白く眠っている人物が過ぎ去っていく年、寄り添う人物が新しく迎える年として表現した。

 眠っている人物が持っている植物はアザミと思われ、過ぎ去った過ちと苦しみを象徴する。一方、寄り添う人物の背後には、羽ばたく鳥や星、明るい色で包まれた教会をシルエットで描き、新しい年が救いに満ちた希望と幸福に包まれていることを暗示する。

 左側には、クリスマスのモチーフであるモミの木の葉と星を縦に描き、複数の手で支えているが、私たち人間の世界が神秘的な力によって支えられていることを表しているようだ。

 当時、人気、実力ナンバーワンの作家であったミュシャが描いたこの作品は、約100年間続いたイリュストラシオン誌上、最も美しい挿絵といわれる。(福井市美術館学芸員・河野泰久) =おわり

=(12月12日付西日本新聞朝刊長崎県版に掲載)=

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