ロートレックと136人の画家展
2020/11/19(木) 〜 2021/01/10(日)
10:00 〜 18:00
佐世保市博物館島瀬美術センター
2020/12/19 |
「紙の質や色の細部まで鑑賞を」
長崎県佐世保市の島瀬美術センターで開催中の「ロートレックと136人の画家展」(佐世保市と西日本新聞社の実行委員会主催)。「ベル・エポック(良き時代)」と呼ばれた19世紀末から20世紀初頭のパリで、市民に親しまれた作品300点以上が楽しめる。松尾真里学芸員と会場を回り、ちょっぴりマニアックな作品の見方、魅力を教えてもらった。
女性美化せず
大胆な構図と色使いで目を引くロートレックの作品群。描かれた人の多くは美しくない。というより、変な顔をしている。踊り子は口をとがらせているし、ヘアメーク中の女性は薄目で手鏡を凝視している。
「女性はきれいに描いてほしいのに、美化することなく、見たままを描いたのでしょう」と松尾さん。「でも愛嬌(あいきょう)がある。ロートレックは人が好きだったんでしょうね」。ありのままに、心の中まで描き出しているようだ。
ロートレックはダンスホールや芸術雑誌の宣伝ポスターを手掛けた。作品はパリ市民に人気だったが、松尾さんは伝達効果に首をかしげる。「人におもねることのない性格のようで、依頼主が思い描く作品ばかりではなかったでしょうから…」
会場の一角には毎月4枚ずつ販売された人気版画集「エスタンプ・モデルヌ」の全100点が並ぶ。そこに戯曲「サロメ」を主題にした作品が2点ある。
1点は、娘が預言者の首を手にした物語のハイライトを描いた。青白い顔は病的に見える。もう1点は王様の前で踊る娘。作者はミュシャ。健康的な肉体美で、同じ女性を描いたとは思えない。
目線変えると金箔
ふと、松尾さんがミュシャの作品を下からのぞくように見上げた。正面からだと茶色のように見える背景の模様が、目線の高さを変えるとキラリと光る。金色の刷りが入っているという。「本物」ならではの鑑賞法だ。
「18禁じゃなくて大丈夫かな」。松尾さんがそう言って案内したのは、ドガが描いた裸婦の作品。お尻や背中の丸み、肉感。体のなまめかしさが黒単色で表現されている。
ドガは女性を毛嫌いしていたらしい。なのに女性の体はリアル。どうやって描いたのだろう。「女性を鍵穴からのぞいていたのでは」。そんな説があるそうだ。
ジャポニズムの影響
展示作品からは、パリ市民の生活や流行が垣間見える。真っ黒な服と傘、ひょうたんのようにウエストを絞った服。日本人形や有田焼を思わせる青色のタイルなど、端々にジャポニズムの影響がうかがえる。
松尾さんは「さまざまな角度から作品を見て、紙の質や色の細部にまで目を凝らしてほしい」と勧める。
島瀬美術センターは、学芸員が会場を巡回して作品を解説する「ギャラリートーク」を年末年始の休館日を除く火、土、日曜の午後2時から開催している。土曜は午後6時からもある。入場料のみで参加できる。
会場でベル・エポックのパリを感じてみませんか。(平山成美)
=(12月16日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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