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福岡アジア美術館
2021/01/25 |
総館長ナビで「お宝」拝見!福岡市美術館
福岡市美術館(中央区大濠公園)の「お宝」を中山喜一朗総館長がナビゲートするシリーズの最終回は、美術館そのものを紹介する。
開館は1979年。日本近代建築の第一人者である前川國男(1905〜86年)が設計した。「打ち込みタイル」の外壁、来館者を館内にいざなう「エスプラナード」、表面を削った「はつりコンクリート」など、工法は芸術的にも興味深い。2019年に前川建築を生かしつつリニューアルした美術館に、さあ出かけよう。
落ち着いた赤茶色の外観はレンガ積みのように見えるが、中山総館長は「磁器質のタイルが貼られていて、うわぐすりの色の変化が美しく、しかも表面劣化が少ない」と説明する。一般的にはコンクリート壁の完成後に薄いタイルをモルタルで貼るが、前川はタイルをコンクリートと一緒に固める打ち込みタイル工法を採用した。
タイルには、コンクリートを流し込む(打ち込む)木製型枠にくぎなどで固定するために小さな穴があけられている。コンクリート壁と一体化するため剝がれにくく、安全性も優れているとされる。
前川は東京大工学部卒業後、フランスに渡り、機能性や合理性を追求したモダニズム建築の巨匠ル・コルビュジエ(1887〜1965年)に師事した。帰国後は、チェコ出身のアントニン・レーモンド(1888〜1976年)が東京に開設した設計事務所に所属。独立後は幾多の後進の育成にも当たった。
1960年代からは京都会館(現・ロームシアター京都)、東京文化会館、東京都美術館、熊本県立美術館など美術館やホールの設計に力を入れた。前川事務所出身の松隈洋京都工芸繊維大教授は著書「近代建築を記憶する」(建築資料研究社)の中で「単体としての建築のありようの中に人が自らの生をゆだねるに足る確かな存在感を求めようとした」と評する。福岡市美術館もその流れの中にある。
開館前に学芸員第1号として採用され、後に副館長や福岡アジア美術館初代館長を務めた安永幸一氏は「前川さんは美術や工芸と生活をミックスしたデザイン理論を実践した。選考会議に向けてリストアップした建築家で、大濠公園の自然に溶け込む設計を頼めるのは前川さんというのが事務局の当初からの思いだった」と当時を振り返る。
福岡市美術館の出入り口は現在3カ所。そのうち大濠公園側の緩やかな外階段を上り、フランス語や英語で「広場」「遊歩道」を意味するエスプラナードを通っ」て、2階出入り口に向かう。エスプラナードも前川建築の特徴。来館者を日常から切り離し、芸術体験をする非日常に入る準備の空間とされる。
館内に入ろう。ロビーの壁面やアーチ状の天井は、コンクリート面がざらざらに削られている。無機質な近代建築に手の温かみを加えるはつり加工だ。はつり天井に反射した照明は柔らかく感じられる。大濠公園を一望できる2階の一角は設計段階からレストランに割り当てた。
リニューアルでは公園の周回道路に直結する出入り口を新設。隣接してカフェを設けた。展示室ごとに壁や床、天井の色調を統一。照明は色調が変えられる発光ダイオード(LED)化した。東光院仏教美術室は寺院内の雰囲気を演出するため山門をイメージした造りにした。
新設の出入り口付近やエスプラナードはイベントの場にもなる。昨年11月には福岡県立城南高の和太鼓部が演奏会をした。2年生の藤田凪さん(17)松山由依さん(17)の両部長は「美術館での発表は得がたい経験」と喜んだ。中山総館長は「前川さんがこだわったデザインは残し、親しまれる美術館としての機能を高めた」と胸を張った。(文・大西直人、写真・納富猛)
【中山 喜一朗 なかやま・きいちろう】
1954年、大阪市出身。東海大大学院修了。81年、福岡市に学芸員採用。同市美術館、博物館に勤務。2019 年から美術館の館長、20年から現職。専門は日本近世絵画。
【メモ】
月曜休館。月曜が祝日・振り替え休日の場合はその後の最初の平日。戦前の福岡で
結成された前衛美術グループ「ソシエテ・イルフ」の作品や資料を紹介する回顧展「ソシエテ・イルフは前進する」は3月21日まで。同展やコレクション展の観覧は一般200 円、高大生150円、中学生以下無料。福岡市美術館=092(714)6051。
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