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ムーミンコミックス展 ユーモアの中に風刺がちらり 姉トーベと弟ラルス、2人の「ムーミン」

2021/06/15 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 ムーミン一家のもとへ、ビーバーのような姿のクリップダッスが助けを求めにやってきた。山と谷で暮らすクリップダッスたちの間で、住む場所を巡る戦争が始まったのだという。劣勢な方を助けるんだったら。矢を作ってあげたムーミン一家。が、かえって戦闘は激化。ムーミンママは、両陣営にニョロニョロの大群を送り込む―。

会場入り口で、ムーミンのかわいいおしりのパネルが出迎えてくれる

 これは、1974年に制作された新聞漫画「MOOMINS IN BATTLE(ムーミンたちの戦争と平和)」のあらすじ。内容は一見恐ろしいが、キャラクターのかわいらしい姿、のんきなせりふに思わず笑ってしまう。

 原画や、キャラの姿をまとめたドローイングなど日本初公開の約280点が並ぶムーミンコミックス展が、福岡県立美術館(福岡市)で開かれている。世界中で今も愛されている、ムーミン谷に暮らす住人たちの物語だ。本展は54~75年に英国紙「イブニング・ニューズ」で連載された作品が中心で、冒頭の「ムーミンたちの戦争と平和」もその一つ。ユーモアの中に、風刺的な表現がちらりとのぞく。

ムーミンの親友スナフキンは人気のキャラクター

 作者は、北欧フィンランドのトーベ・ヤンソンとラルスの姉弟。本展のプロデューサー、西沢寛さんは「トーベは政治雑誌での過激な風刺絵で批判を浴びたことがあり、表現を意識的にやわらかくしていたようだ」と解説した。

 連載初期は姉トーベが絵とせりふ、弟ラルスがネタ探しと英訳を担当し、60年からは弟の単独制作だった。

 連載を引き継いだ当初、弟は姉の絵を忠実にまねて執筆していたが、慣れるにつれて独自の画風で描くようになったらしい。丸々したムーミンの姿は維持しつつ、よく見ればいくらか角張っているのに気づく。

 トーベ関連99点、ラルス関連180点の展示。西沢さんは「大学で絵を学び、デッサン力もあったトーベが手早く描き上げたのに対し、不慣れなラルスは時間をかけ丁寧に描いていたのだろう。大胆なトーベときちょうめんなラルス。じっくり見比べ、2人の作風の違いを実感してほしい」と話してくれた。

 キャラを判別しやすいようにムーミンママのエプロン着用を求めた新聞社の提案、季節感を大事にして作品の掲載順番が前後したエピソードなどが紹介。ムーミンの親友スナフキン、辛口なちびのミイなどを見つけるのも楽しい。原画は英語表記だが、一部の作品には邦訳が付けられている。(文・福田直正、写真・納富猛)

「ニョロニョロ軍、前進せよ!」
「ほんとうにうまくいくのかな?」
「もちろんよ。」
「ほら、クリップダッスも、武器がなければ戦えないでしょう?」

ラルス・ヤンソン作の「MOOMINS IN BATTLE」の原画(1974)
©Moomin Characters™

=(6月11日付西日本新聞朝刊に掲載)=
 

●芸術一家 若くして 才能開花 トーベとラルス

ムーミン原作者のトーベ・ヤンソン(左)と弟のラルス 
©Moomin Characters™

 第1次世界大戦が始まった年に生まれた原作者のトーベ・ヤンソン(1914~2001)は、フィンランドの首都ヘルシンキ出身。父は彫刻家、母は挿絵画家の芸術一家だった。15歳で雑誌やポストカードのイラストレーターとしてデビューし、仕事をこなしつつ国内外でデザインや絵画を学んだ。

 弟ラルス・ヤンソン(1926~2000)は、15歳で冒険小説を出版。トーベとともにムーミンの漫画制作などに関わり、60~75年は一人で制作した。

 ムーミンの物語は45年秋、トーベが出版した童話「小さなトロールと大きな洪水」から始まる。シリーズ第3作「たのしいムーミン一家」は英訳されてイギリスで好評を博し、英国紙「イブニング・ニューズ」での連載のきっかけとなった。連載前、トーベは現地で反感を買わないよう、英語に堪能なラルスに英国文化について資料を集めてもらっていたという。

 2人は日本で制作されたテレビアニメ(90年放送開始)の制作にも監修として関わった。

トーベ・ヤンソン作の「まいごの火星人」のドローイング(1957年)
©Moomin Characters™
ムーミンの人形と「ハイ、チーズ」


●ムーミンコミックス展 福岡県立美術館、来月11日まで
 7月11日までの午前10時~午後6時、福岡市・天神の福岡県立美術館。西日本新聞社など主催。月曜休館。入場料は一般1500円、高大生1100円、小中生600円。未就学児無料(保護者同伴)。緊急事態宣言中は、本展以外の館内施設は閉鎖している。同美術館=092(715)3551。

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