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【学芸員コラム】久留米市美術館の川端康成展(前編) 美術館で文学?

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アルトネ編集部
2017/04/17
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文豪・川端康成のコレクションを紹介する展覧会が久留米市美術館で開催されている。そのみどころについて、副館長兼学芸課長の森山秀子氏に寄稿いただいた。(編集部)

ロダン《女の手》を見る川端康成    撮影:林忠彦

 

川端康成(1899-1972)は、『伊豆の踊子』、『雪国』などの作者として、また日本人初のノーベル文学賞受賞作家として知られます。彼は、美術にも大変造詣が深く、美術コレクターでもありました。「もちろん名前は知っていたが、美術品を集めていた、とは知らなかった」という声をよく聞きます。とは言え、川端が収集したコレクションを公開する、いわゆる川端コレクション展は、2002年以来、日本各地の美術館で開催されてきており、久留米市美術館は29館目の開催館となります。

川端コレクションは、川端邸内での発見がいまだに続いており、その全貌が明らかになるには時間が必要です。つい先頃、久留米市美術館での開催準備中にも、夏目漱石、島崎藤村、室生犀星ら文豪たちの書48点を含む計76点の発見があったことが公表されました。新発見を加えることで、川端を違う角度からとらえることが可能となります。川端コレクション展の今後の展開が楽しみでもあります。

久留米市美術館で開催中の「川端康成 美と文学の森」展は、従来の川端コレクション展にしばられず、独自の視点で構成しています。この展覧会は、川端コレクションを核にしてはいますが、東京国立近代美術館、神奈川県立近代美術館、ブリヂストン美術館など他館からも作品を借用して構成している点、川端の人となりにも注目している点、彼の小説世界もできるだけ紹介している点、そのため初版本や雑誌を多数展示している点が異なります。とは言え、ここは美術館。企画する者も文学を専門としているわけではありません。あくまでも美術に注目して川端文学を読むことでこの展覧会を組み立てました。

川端が自身のコレクションについて語る言葉、随筆や小説の中で、画家や美術品にふれた言葉は、鋭い観察眼によりながら美術品やその作者への愛情にあふれています。今回の展覧会では、そのような言葉をできるだけ紹介しています。彼の語る言葉は、私たちが美術品に接したときの心の声を代弁してくれているように思えるのです。

 

森山 秀子(もりやま・ひでこ

久留米市美術館副館長兼学芸課長。おもに日本近代洋画を担当。今まで担当した展覧会に、「古賀春江―前衛画家の歩み」(1986年)、「坂本繁二郎展」(2006年)、「PASSION 石橋正二郎生誕120年を記念して」(2009年)、「古賀春江の全貌」(2010年)、「没後100年 青木繁展」(2011年)、「髙島野十郎 里帰り展」(2011年)(以上石橋美術館)、久留米市美術館開館記念「九州洋画」展(2016-17年)など。 ​

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