
江口寿史展
EGUCHI in ASIA
2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
09:30 〜 18:00
福岡アジア美術館
2024/12/23 |
|
西日本の皆さんにはあまり馴染(なじ)みがないかもしれませんが、デニーズというファミレスで1992年から5年間ほどメニューブックの表紙イラストを担当していました。デニーズのメニューブックの表紙といえは、ぼく以前には浅井慎平やヴィム・ベンダースの写真、日比野克彦や鈴木英人など、その時代時代の国内外のアートを起用するなど、そこはかとなくカルチャーの香りを漂わせて、他のファミレスとのイメージ差別化を図っていたように思います。
そのメニューブックの担当者が新しい表紙にぼくの名前を挙げた時、社内上層部からは「漫画家なんかダメだ」と猛反対の声が上がったそうです。漫画がMANGAという世界共通語となり、クールジャパンと謳(うた)う日本カルチャーの代表格となった現在からは想像できないと思いますが、90年代初頭の、それが現実でした。おじさんたちの反対を押し切る形でスタートしたこの仕事でしたが、お披露目されるや大好評。結果、その後97年まで続く事となり、個人的にもイラストのオファーが激増する契機にもなった仕事でした。
デニーズ国内第1号店が出店した74年から50周年を前にした昨年、26年ぶりにメニューブックのイラストのオファーがきました。が、正直、ファミレス文化はあの当時と違ってすっかり下火になってしまいました。今の時代のファミレスのメニューブックに記名性の高いイラスト作品など求められるのか。レストランのメニューなど料理の写真で充分なはず。今の時代ではそれは「余分なこと」ではないか。そんな懸念はありましたが、精一杯の力を込めて昨年と50周年イヤーの今年、2年続けて描きました。
メニューブックが店内に出された直後からSNSに毎日あがる反響の大きさは予想以上で、「このイラストを見るために久しぶりにデニーズに行った」との言葉は作者冥利(みょうり)につきると共に、「余分なもの」を求める人の気持ちは今も変わらずあるのだな、との思いを強くしました。
(えぐち・ひさし、熊本県水俣市出身)
◇◇
デニーズのイラストを含む作品が展示されている「江口寿史展」は、福岡アジア美術館(福岡市博多区)で来年1月12日まで。観覧料は一般1500円など。水曜と12月26日~1月1日は休館。西日本新聞イベントサービス=092(711)5491。
=(12月19日付西日本新聞朝刊に掲載)=
2025/02/08(土) 〜 2025/04/06(日)
福岡市博物館
2025/01/21(火) 〜 2025/05/11(日)
九州国立博物館
2025/01/25(土) 〜 2025/03/20(木)
福岡市美術館
2025/01/05(日) 〜 2025/02/16(日)
大野城心のふるさと館
2025/01/04(土) 〜 2025/02/09(日)
下関市立美術館