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「至上の印象派」特別寄稿 美術品の宝庫、スイスを代表するコレクション【コラム】

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アルトネ編集部
2018/03/16
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皆さんスイスといえば何を思い出すでしょうか? 
 

永世中立国。アルプスの山々と森と湖の美しい国。時計をはじめとする優れた精密機械の国。などなど、それぞれにイメージをお持ちでしょうが、スイスと美術を結びつける方はあまり多くないのでは。しかし、この国はヨーロッパでも有数の充実した美術コレクションを誇る国でもあるのです。北海道の半分ほどの面積に800万人弱の人々が暮らすこの国には、ベルン、バーゼル、チューリヒ、ジュネーヴといった主要な都市がありますが、それぞれに大きな美術館があり、中世から現代に至る幅広く質の高いコレクションが収蔵されています。それ以外にも個人のコレクションを公開する小規模の美術館が数多くあり、こちらも質の高さでは大美術館に負けないほどの充実ぶりです。パリのルーヴル美術館やロンドンの大英博物館のような、ランドマーク的な巨大な施設がないために注目度は今一つですが、国土全体にまたがる美術品の質と量の両面において、スイスは間違いなく第一級の美術大国です。その美術大国スイスを代表する個人コレクションがビュールレ・コレクションです。

ビュールレ・コレクションのプライベート美術館(2015年以降は閉鎖)

このコレクションを作ったエミール・ゲオルク・ビュールレ(1890-1956)は、ドイツの生まれですが30代でスイスに移住し、その後スイス国籍を取得しました。学生の時に美術史を学んだ彼は、実業家として成功を収めると、その富を美術品の収集に注ぎ込みます。彼が本格的に美術品の収集にのめりこむのは1936年のことで、その後亡くなるまでの20年間に600点を超える作品がビュールレのコレクションとなりました。個人による美術品のコレクションというと、アメリカのバーンズ・コレクションを連想される方もいるでしょう。あちらは総点数3000点以上ですから、それに比べるとビュールレのコレクションはかなり小ぶりです。しかし、規模が小さいことと中味の重要性とはもちろんイコールではありません。このコレクションの特徴は印象派とポスト印象派に集中していることと、作品の質が恐ろしいほど高いという点にあります。その質の高さは、なぜ個人が、たった20年間に、これほどのコレクションを作り上げることができたのだろう、と不思議に思うほどのレベルです。

コレクションを代表する2点、ルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》とセザンヌの《赤いチョッキの少年》を見るだけでも、恐ろしいほどの質の高さがよく分かるでしょう。美術に興味のない方でも、ルノワールとセザンヌの名前を知らないという方でも、この2点はどこかで目にしたことがあるはずです。いずれも二人の代表作というだけでなく、19世紀のフランス美術を代表する、歴史に残る名作です。

ピエール=オーギュスト・ルノワール
《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》
1880年 油彩、カンヴァス 65×54cm
ポール・セザンヌ
《赤いチョッキの少年》
1888-90年 油彩、カンヴァス 79.5×64cm

この2点を含む傑作の数々を紹介する展覧会が5月中旬から九州国立博物館で開催されます。なぜこの2点が名画といわれるのか、ご自身の眼で是非確かめてください。自分は美術の知識がないから、などとしり込みする必要はありません。作品の前でしばらく佇めば、ああ、これなのだな、と心に湧き上がってくる瞬間が必ず訪れるはずです。画集やモニターでは得られない、本物の名作だけが与えてくれる静かな喜びに心満たされる時がやってきます。至福の時とは、まさにこの瞬間。スイスまで行かずとも、この喜びに浸れる幸せをかみしめましょう。そして、さらに欲が出てきたなら、思い切ってスイスまで飛んでいき、他の傑作の数々も堪能する、美術三昧の日々を送ってみましょう。感動の連続で少々疲れても大丈夫。美術館の外に出れば、そこには雄大なスイス・アルプスの峰々が広がり、疲れた目と心を優しく癒してくれます。(深谷克典:名古屋市美術館副館長)

All images:©Foundation E.G. Bührle Collection, Zurich (Switzerland)
Photo: SIK-ISEA, Zurich(J.-P. Kuhn)

 

深谷克典(ふかや かつのり)
1979年名古屋大学文学部美学美術史学科、神戸大学大学院芸術学芸術史学科修士課程修了後、姫路市立美術館準備室、姫路市立美術館、名古屋市美術館準備室に勤務。名古屋市美術館の開館にともない、学芸員として勤務、以後、学芸係長、学外課長 を経て、現在名古屋市美術館副館長を務める。
主な著書に『モディリアーニ』(日本経済新聞社)、『ルノワール』(西村書店)がある。主な担当展覧会は、ルノアール展(1988年)、ピカソ展(1998年)、モネ-睡蓮の世界展-(2002年)、生誕100年記念―ダリ展(2007年)、没後120年 ゴッホ展(2011年)など、多数を手がける。

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