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【学芸員コラム】こんなところにアートが!?福岡市美術館ボランティアが街歩きをナビゲート!

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アルトネ編集部
2017/04/29
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今年も福岡ミュージアムウィークの時期がやってきた。5月18日の「国際博物館の日」を記念して、その日を挟む9日間を「ミュージアムウィーク」とし、今年は福岡市内の17の館が多様な催しを開催する。福岡市美術館は休館中だが、だからこそ、美術館を飛び出して、街の中のアートを巡る「街歩きアートツアー」を実施することとなった。このツアー、単に美術館を飛び出して行うツアーというだけでなく、福岡市美術館ボランティアが企画から運営まで行う。街の名所などを案内する観光ボランティアは一般的に知られているが、美術館ボランティアが美術館を飛び出して街の中のアートについて語ることは、全国的にも珍しいものではないだろうか。企画時に、美術館からボランティアに出された条件は、ツアーの中で必ず福岡市美術館の作品にちなんだものを紹介する、ということ。そのほか何を取り上げるかはそれぞれのボランティアに任せられた。こうして、どの程度の時間が適正なのか、移動距離はどの程度がよいのか、参加者が良いと感じるツアーはどんなツアーかなどを考えつつ企画を進め、個性あふれる6つのツアーができあがった。

このツアーの最も大きな魅力は、福岡という街に慣れ親しんだ者にとっても、初めて訪れるものにとっても「こんなところにアートが!」という発見の楽しみがあるところだろう。実は、ボランティア自身がそんな楽しみを味わいながらこれらのツアーを組み立てたのである。

そしてもう一つの魅力は、全てのツアーではないが、通常は入れないところを見学できる、ということだ。実は筆者も、準備のおりに初めて見学させてもらったところがあった。その中でも、県立福岡高校には、1920年代に建てられたアールデコ様式の校舎や卒業生である外尾悦郎氏のパティオなどがあり、高校という思いもかけない場所での文化財やアートとの出会いに感動すら覚えた。他にも、福岡市美術館の所蔵作品がもともと置かれていた寺院・東光院の見学や、所蔵作家に会うなど、美術館とはひと味違った体験ができるツアーもある。

このようなツアーが実現できたのは、市内のさまざまな方の協力と、そして実はボランティアという市民の知恵や知識があってのことに他ならない。さらにそこからわかるのは、見方さえ変えれば、身近なところにアートはあふれているということだろう。そのことを「発見」させてくれるこれらのツアー。ぜひ多くの方々に参加し、体験してもらいたいものである。

さらにミュージアムウィークの最終日である5月21日(日)には、『美術という見世物〜油絵茶屋の時代』(ちくま学芸文庫、サントリー学芸賞)、『写真画論〜写真と絵画の結婚』(岩波書店、重森弘淹写真評論賞)、『ハリボテの町』(朝日新聞社)、『世の途中から隠されていること〜近代日本の記憶』(晶文社)などの著者である木下直之氏を迎え、講演会と座談会を開催する。座談会には、福岡市美術館学芸員も登壇し、木下氏と未来の美術館について語る予定だ。「文化」や「芸術」と言われているものの正体はそもそも何なのか、何を「文化」と言うべきか、多面的にかつ鋭く論じてきた木下氏が、学芸員とともに美術館の未来をどのように語るのか。ぜひ、「街中アートツアー」と合わせて楽しんでいただきたい。

 

鬼本 佳代子(おにもと かよこ)
福岡市美術館 主任学芸主事

1997年教育普及専門学芸員として福岡市美術館に勤務する。1999年大阪大学大学院文学研究科前期博士課程(修士課程)修了。2008年から2012年まで大原美術館の主任学芸員として勤務。2012年に福岡市美術館に戻り現職。市民と美術館・美術を結ぶ活動として、ボランティアの育成や学校・地域団体との連携活動、アーティストによる市民向けワークショップなどを企画している。

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