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アパレル関係者が見たモリスの壁紙展 植物図鑑のような精密さ【コラム】

2018/12/14 LINE はてなブックマーク facebook Twitter
ウィリアム・モリス《ピンパーネル(るりはこべ)》1876年(印刷) ©Morris & Co.

洋服をデザインし、縫い上げるまでの作業はいくつかの工程に分かれていて、服地に使用するプリント柄や織り柄を決めるのはテキスタイルデザイナーと呼ばれる専門職の仕事です。わが社でも10年くらいのキャリアを持つデザイナーたちが年間3千枚ほどの洋服のプリント柄を毎日描き続け、ファッションの下地を作ってくれています。

そんなテキスタイルデザイナーを目指す人々が、美術学校で最初に教わるプリントデザインの神様のような人がいます。その作家の作品展がなんと今、久留米市美術館(福岡県久留米市)で開催されているんです。

ウィリアム・モリスと英国の壁紙展」。モリスは19世紀後半に英国で活躍したマルチな芸術家ですが、木版の壁紙作りで評価され、工芸作家としての地位を確立しました。

現代では壁に壁紙を張るのは当たり前のことですよね。でも近世のヨーロッパでは、室内の壁を飾れるのは一部の貴族と富裕層だけ。財力を誇示するために、壁を絵画や装飾品で飾りたてていました。しかし18世紀後半の英国で始まった産業革命により生活様式が一変。19世紀には機械を使った安価な壁紙も作られるようになり、庶民も自宅の壁を装飾する時代を迎えるのです。そんな中、大量生産される質の悪い壁紙を嫌い、壁紙にも芸術性を求めようとする人々も現れます。モリスはその一人でした。

私は今回初めてモリスがデザインした実物の壁紙を見たのですが、本当に素晴らしかった。植物図鑑のように細部まで精密に描かれた美しい花や樹木。それらが大胆な構成とシックな色使いで繰り返し刷られています。壁紙なのに絵画のようにずっと見ていても飽きません。作品がこれほどまとまって英国以外を巡るのは珍しいと聞き、感動をイラストにしてみました。

モリスは言ったそうです。「生活の中心である家の中にこそ本物の美が必要である」と。つい自分の生活を振り返りました。日本は「安い」というキーワードばかりで物作りが進んでいます。洋服の世界もインテリア雑貨の世界も。ワンコインでそろう雑貨で部屋を埋め尽くすことに慣れた自分を、ちょっぴり反省した時間でした。

美しい壁紙を堪能して美術館を出ると、バラ園が目の前に広がり、古き良き英国の邸宅を訪れたような錯覚を覚えました。展示は27日まで。 =12月7日 西日本新聞朝刊に掲載=(大倉紀子:アパレル企画会社代表)

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