江口寿史展
EGUCHI in ASIA
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福岡アジア美術館
2019/02/27 |
会場に濃密な死の気配が満ちていた。命が尽き、朽ち果てた動物を題材にした23点の絵が並ぶ。駅の待合室も兼ねた空間に展示するには刺激が強い作品だが、国内外から訪れた観光客の反応は悪くない。グロテスクさより、死の裏側にある強烈な生とはかない美しさを感じさせるからだろう。梶井基次郎の「桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている」という有名なフレーズを思い出させる。
福岡市の画家安藤圭汰(26)が、大分県由布市湯布院町のJR由布院駅アートホールで個展を開いている。神奈川県出身。九州産業大で洋画や版画を学び、2013年に全国公募展「ドローイングとは何か」展で大賞を受けるなど、注目を集める若手の一人だ。
大学入学以前から10年近く「生と死」や「循環」をテーマに、死んだ小動物や鳥を硬質な線で細密に描いてきた。「道ばたで死んでいる動物に対する違和感や怖いと思う感情を描かずにはいられなかった。目を背けずに見つめるときれいだと思える瞬間がある」と本人は言う。
うまく描こう、似せようという気持ちを排除するため、実物を描き写すことはほとんどない。作品世界は描きたいと感じた初期衝動を反映させ、モチーフやその骨格を創作しながら死を「作品」へと昇華させる。個展のために制作した縦3メートル、横6メートルの大作では、横たわる4本足の生物の手足を人のそれに変えて描き、死をタブー視する現代社会を挑発する。
今回の展覧会タイトルは「骨。或いは山」。「山」は「自然」と言い換えられる。死んだ者はいずれ土に帰る、という死生観の影響が色濃い。仏教絵画の九相図(くそうず)に着想を得た連作では、屋外にうち捨てられた死体が次第に腐食し、最後は白骨や形をとどめない状態になるまでを9段階に分けて描き、風化していくものの美しさが表現されている。
会期中に初挑戦したライブドローイングでは、事前に描いた絵に10時間かけて筆を加え、肉体を朽ち果てさせて骨にしていった。陰影を付けるために鉛筆で木板を激しくこする音が、肉を削り、死の強度を深めているようだった。
4月末から約1カ月間、インドネシアの古都ジョグジャカルタの美術館に滞在し、制作に取り組む。イスラム教のラマダン(断食)の時期だ。異文化に死生観やアイデンティティーを揺さぶられた先にどんな新境地をつかんでくるのか。帰国後の報告展も期待したい。(佐々木直樹)=2月25日 西日本新聞朝刊に掲載=
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