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笑い追求 新時代も 劇団「大人計画」主宰・松尾スズキさん語る 福岡市で活動回顧展 資料740点、創作過程鮮明に【コラム】

2019/04/16 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

旗揚げから30周年を迎えた劇団「大人計画」の活動を振り返る「30祭(SANJUSSAI)凱旋(がいせん) 大人計画大博覧会in福岡」が、福岡市・天神のイムズで開かれている。昨年末に東京で開催された企画の巡回展。3月下旬には、北九州市出身で劇団主宰の松尾スズキさん(56)が凱旋。歩みを回想しつつ、見どころも教えてくれた。

「福岡での子ども、青春時代は自分を形成する大事な時間。そこで軌跡を見てもらえるのはうれしい」と語る松尾スズキさん

「ばかなこといっぱいやってきた。よく怒られなかったと思いますよ」。会場を一巡した後、松尾さんは開口一番、そう言って笑った。三菱地所アルティアム(8階)とイムズプラザ(地下2階)の2会場に分かれた展示では、松尾さんのイラスト原画、舞台や稽古写真、公演チラシ、衣装など計約740点が並ぶ。
劇団初期の資料を中心に構成したアルティアム会場入り口には古びた原稿用紙があった。福岡市の九州産業大在学中に初めて書いた「ホノルル食堂の青とかげ」だ。この一幕物の戯曲は自宅に眠っていた。「誰にも見せずに終わった幻の作品」と言う。そばには2004年の舞台「イケニエの人」の構想メモもある。大きなポスターの裏に、登場人物のキャラクターや動き、顔のイラストまでも書き込まれている。創作過程が垣間見える貴重な資料だ。
見どころの一つは舞台写真。1988年の旗揚げから昨年の公演にいたるまでの写真を2会場にわたり時系列で並べ、劇団員のコメントも展示。劇団が大きくなっていくさまが伝わる。
九州では頻繁に公演できない現状もある。「僕が若い頃どんなことをやっていたか(九州の)ほとんどの方が知らないし、今にいたる過程を見ていただくチャンスもなかなかない。こういう道をたどって松尾はここにいるとか、大人計画はどういう集団なのか分かってもらえれば」と期待する。

イムズプラザでの展示の外側には公演のチラシが並んでいる

大人計画は、絶大な人気を誇る脚本家、宮藤官九郎さん(48)が所属する。マルチに活躍する星野源さん(38)とは俳優活動のマネジメント契約を結んでいる。
宮藤さんを「“おもしろ”にとりつかれた男」、星野さんを「勝手に育ったモンスター」と評す。同時に「ともに愛嬌(あいきょう)がある。それがある種のポップさを自分の中に呼び込んだ」と人気の理由を分析する。そんな2人を含む劇団員たちの若い頃と現在の写真を飾ったコーナーもオススメだという。「劇団員が知られだしたのは中年を過ぎて。でも中年の姿で生まれたわけではない。若い頃はお金はないけれど、もしかしたら今より楽しくやっていた。それを見て面白がってもらいたい」
受付で有料貸し出されている音声ガイドも面白い。松尾さんを含む劇団メンバー18人が登場し、聞いていると、松尾さんと劇団の根底に「笑い」があることがひしひしと伝わってくる。

劇団メンバーのパネル展示コーナーでは写真撮影もできる

北九州で育った少年時代から「抑圧」に敏感だったと松尾さんは振り返る。学校、社会のルールに過剰反応して苦しくなる。唯一の救いがテレビや漫画の笑いだった。「笑いは僕の基礎。その先には抑圧から自由になりたいという気持ちがずっとある」と言う。
劇団の歴史は平成とほぼ重なる。平成は終わってしまうが、劇団は次の「令和」の時代も続いていく。
「今も笑いたいし、笑わせたい」。時代が変わってもその姿勢は変わらないのだろう。 =4月4日 西日本新聞朝刊に掲載=(小川祥平)

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