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構成の美 一貫して追求 富松孝侑展【コラム】

2020/04/08 LINE はてなブックマーク facebook Twitter
富松孝侑の「88-漂」(左)

 大人の背丈ほどある四角い枠の上辺から、3本の足が生えている。足は曲がりながら枠外に伸び、地に吸い込まれる。目に見えない地の底で、どこまで伸びているのか。平らにならされた世界から、未知のエネルギーが飛び出してきたようでもある。2014年に死去した彫刻家富松孝侑(たかゆき)の代表作の一つ「88―漂」(1988年)は、抽象的で想像力をかき立てる。直線と曲線を対比し、どっしりした部材を宙に浮かせた構成にも妙味がある。

 富松は1935年、福岡県久留米市生まれ。東京芸術大彫刻科卒業後、アントワープ国際彫刻ビエンナーレなどの国際美術展で評価を高めた。74年からは愛知県立芸術大で教えた。

 そのスタイルは自在に変わり続けた。「88―漂」では、豊かなボリュームにノミ痕を残した。一方で、つややかに磨き上げたブロックを組み合わせ、軽快な幾何学模様のように仕上げた壁掛け型の作品もある。一貫して構成的な美しさを追求しつつ、造形のバリエーションを無限に広げた。

 「15分の時間があれば制作する」「(作品を)人に見せるより、木のお守りの方が楽だ」。教え子の一人で彫刻家の床田明夫(福岡市)は、純粋に探求を重ねた恩師の言葉を思い出す。敬慕し、作風が似ていく学生もいたが、背中に追いついたと思った時は既に、師の手からは全く別の彫刻が生み出されていたという。

 2000年に退官後、作品を満載した10トントラック2台と一緒に、久留米へ帰郷した。作品の幅も広く、数も膨大だった。

 現在、富松の展示会は、「88―漂」を展示する福岡市中央区のギャラリー「エウレカ」など同区内3カ所で同時開催中。故人が残した抽象性が高い彫刻に、虚心に向き合うのもいいだろう。(諏訪部真)=4月3日付西日本新聞朝刊に掲載=

 富松孝侑展はエウレカで4月11日まで。ギャラリーM.A.Pで4月12日まで、宇久画廊で4月19日まで。

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