江口寿史展
EGUCHI in ASIA
2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館
日程
2019/06/29(土) 〜 2019/09/06(金)
会場 現代美術センターCCA北九州 CCAギャラリー |
ローザ・バルバはイタリアに生まれ、現在はベルリンを拠点に活動しています。 ケルン・メディア芸術大学で学び、昨年スウェーデンのルンド大学にて博士号を取得しています。ロンドンのテート・ギャラリーやニューヨーク近代美術館、マドリッドのソフィア王妃芸術センターなど、世界各地の美術館やアートセンターで作品を発表する他、ベネチア・ビエンナーレやシドニー・ビエンナーレの国際美術展にも参加、また映画祭でも作品を発表しています。 日本では、今年の瀬戸内国際芸術祭に参加しています。
バルバはフィルムや彫刻的なオブジェ、インスタレーション、サイトスペシフィックな作品やパフォーマンスなど様々な手法を使って作品を発表しています。 ジェスチャーや様式、情報や文書などと比較した時の映画産業の位置づけを探求し、それゆえに構成の問題、形のもつ「物」としての性質、可塑性といったことが、作品では重要になります。 バルバは、それらの項目を、一般的な文脈から切り離してから再び形にし、新しいものとして提示するのです。 彼女の映像には、よく自然の風景とその中にある人工的な分断が映し出されますが、その印象的なイメージは、歴史的な記録、個人的な逸話、そして映画的な表現が集結する場になるのです。
今回の現代美術センターCCA北九州のプロジェクトでは、バルバの代表的な作品でもある、映画的な彫刻と映像に焦点を当て、その一つ「地球の中心から外へ」(2007)は、消滅の危機にさらされた島を舞台にしたフィクションを軸に展開されます。 それぞれが生き残り、社会を存続させるためには、住民が一致団結して行動を起こさなければならない、という設定ですが、島は年間1メートルずつ移動しているということで、どこか現実味を帯びてもいます。 作中の研究者や専門家による報告は、超現実的な雰囲気を醸し出し、当初は美しいドキュメンタリーが、より抽象的になり、人々が苦悩する姿や弱さを露呈していく奇妙な映像になっていくのです。
バルバの映像作品では、現実と非現実があいまいに表現されることがよくありますが、今回展示される「経験的な効果」(2010)もその一つです。 舞台となるのは、南イタリアのヴェスヴィオ山のある地域です。 2009年夏に撮影されたこの作品の主人公は、最後に起きた1944年のヴェスヴィオ山噴火を生き延びた、直接その被害が及ぶエリア「赤の地域」の住人です。 信じられない程の緊張と隣り合わせながらも、無力で穏やかでもある生活を送る社会を描いています。
この2つの映像作品は、自然災害や疎外感、生き残る意味について思い知ることになる、自然と人間の力の間にある複雑な関係についてのものですが、「Enigmatic Whisper (不思議なささやき)」(2017)では、20世紀を代表するアーティスト、アレキサンダー・カルダー(1898-1976)をとらえています。 米国コネチカット州ロクスベリーのカルダーのスタジオを16mmフィルムで撮影したこの作品が映し出すのは、カルダーが使ったままの形で残されている道具や素材のイメージを通して見える、映像的な肖像画であり、自然な、外に向けられたコンテキストです。 そしてカメラは、今でもスタジオの天井から吊るされている、カルダーのアイコン的ともいえるモビール作品を追っていきます。 映像から作り出されるリズムは、幾度も繰り返される突然の場面変更と、背景に流れるドラムとトランペットの音、そしてカルダーの動きのある作品によって作られていくのです。
ローザ・バルバは、2019年6月29日までCCA北九州に滞在します。
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