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2021年九州・山口エリア 展覧会入場者ランキング 1位は山口県立美術館『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展』

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秋吉真由美
2022/02/21
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 コロナ禍、感染対策を講じながらの展覧会開催となった2021年。アルトネ編集部では、美術館・博物館の回答を元に2021年に開催された展覧会入場者数ランキングを集計。2021年の入場者数ランキング1位となったのは、山口県立美術館で開催された『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展』。コロナ禍で試行錯誤しながらの開催について、山口県立美術館・河野通孝副館長に振り返っていただきました。

 

2021年の九州・山口1位は「古代エジプト展」

 「2020年に続き、2021年も非常に厳しい1年でした」と振り返る河野通孝副館長。4月、7月~8月には予定していた展覧会の一部中止が余儀なくされたほか、感染拡大に比例して来場者が減少。「山口県は比較的、感染者数が少なかったとはいえ、都心や隣接する県での感染拡大に県民は敏感。しっかりと感染対策を施していましたが、やはり入場者数が伸び悩む厳しい状況でした」という。

 だが、タイミングよく感染者数が少し落ち着き始めた時期と重なった、『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展』は、開幕が当初予定していた9月18日から9月27日に延期されたものの、無事に大盛況のうちに11月7日に閉幕。九州・山口エリアで開かれた展覧会の入場者数1位を記録した。

山口県立美術館『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展』の様子

 「ランキング全体を見ても、『ミイラ 「永遠の命」を求めて』(3位)、『特別展「皇室の名宝 ―皇室と九州をむすぶ美―」』(4位)、『木梨憲武展』(7位)、『キングダム展 -信-』(9位)など、やはり一般的に知られているコンテンツの強さを感じますね」

 

コロナ禍で変わった展示

 山口県立美術館は、以前からパッケージ化された巡回展も独自の視点で再編成する。「与えられた素材をどう料理するかは常に考えています」

 会場によって構造や客層が違うこと、コアな美術ファン以外の来場も取り込みたいため、“お客様の目線でより分かりやすく”を念頭に置いて再編成しているという。

 「第一章に入ってもらう前に、別途、序章を設けることが多いです。お客様のワクワク感を引き出そうと、照明やサインなどにも凝り、空間全体でインパクトを与える事を心がけています。そうすることで、作品の魅力をより引き出せると思うんです。知名度のある作家の展覧会であっても、構成に手抜きしたら結果は出ません」

 「ランキング1位となった古代エジプト展は、根強い人気があるコンテンツ。混雑回避のため、入場者数を1時間420人に限定し、待ち時間も発生しましたが、感染対策を第一に工夫しながら開催しました。中止や自粛の反動からか、スタートして1週間は特に反響が大きく、ホッとしました」と明かす。

 コロナ禍だからこそ生まれたコレクション展もある。「2020年ですが、特別展が中止になったことで、大規模特別展を開くサイズの会場でコレクション展『Distance―ディスタンス』を実施しました。350平米の会場に、密を避けるために写真5点と彫刻5点のみを展示するという、考えようによってはガランとした寂しい展覧会です。もちろん、そうならないように配置には気を配り、床には1メートル四方の大きなキャプションを貼りました。その横には、巨大なQRコードも貼付け、専用タブレットでアクセスすると、学芸員による“ディスタンス”にちなんだ作品解説の動画を見られるようにもしました。入場者数は思うように振るいませんでしたが、評判も良く、作品の新たな魅力を引き出せたと思います」

コレクション展『Distance―ディスタンス』の広報物

 その後の巡回展では、ディスタンス展の経験も生きた。「比較的混み合う入口付近は、展示作品の間隔を広くしたり、密を避けるために、左右どちらからでも解説を読めるように、同じ解説を二つ掲示したり、文字を大きくして高めの場所に掲出するなどの工夫を凝らしました。今はそれがほぼ当たり前になりつつあります」

 

コロナ禍、経営の脆弱性が浮き彫りに

 コロナ禍が始まったばかりの2020年5月26日~6月7日に開催した『ハマスホイとデンマーク絵画』では、感染症対策のため、入場者を20分毎に15人に限定して実施。一部屋の鑑賞時間を設け、自分のペースでは進めないものの、ゆったりと作品を楽しめると好評だったという。「ルールの説明など手間はかかりましたが、終わってみれば好評でした」と河野通孝副館長。

 アートは不要不急か――。エンターテインメント施設は休館を余儀なくされた時期も。「改めて作品が持つ力に気付かされることもありました。例えば、ユニークな笑顔の人物が描かれた東洋美術なんかを見ると、今までは『変な笑い顔だな』と思って見てるだけだったのが、『昔からこんな笑顔に癒されてきたんだな』と思うようになったり。2022年もコロナ禍が続きそうですが、コロナ禍だからこそ、美術の持つ力が心に余裕が持たせてくれるはず。美術はいつのタイミングも大切だと常々思っています」

 同館が独自に制作する特別展のCMもこだわっている。会場に足を運ばない人へのメッセージも込めているそうで、「いつも“元気が出るCM”を作ろうと心掛けています。コンテンツの知名度に頼る集客ではなく、CMでどう好奇心を持ってもらうか、美術ファン以外の層にも引っ掛かる訴求を目指しています」

 「コロナ禍で美術館・博物館は弱体組織であることが露わになりました。経営の脆弱性を突き付けられた年で、やはり疲れましたね。特に、山口県立美術館はコンスタントに集客が見込める美術館ではあるものの、年間15万人の来場見込みの上で予算も成り立っている。日本の美術館・博物館は、海外のように寄付が沢山あるわけではないので、今後は入場券だけの収益だけに頼り切らない仕組みを作って行く必要があると思います」

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