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美術監督の三池敏夫さんに聞く 特撮 創意工夫を継承 「特撮のDNA-ゴジラ 特撮の科学展-」福岡市科学館で14日まで【インタビュー】

2023/05/08 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 映画「ゴジラ」シリーズなどで使われた特殊撮影(特撮)の魅力に迫る「特撮のDNA―ゴジラ 特撮の科学展―」(西日本新聞社など主催)が、福岡市中央区の市科学館で開かれている。草創期から現代まで、特撮の変遷や制作者たちに受け継がれた思いが伝わる展覧会だ。展示に協力した特撮美術監督・特技監督の三池敏夫さん=御船町出身=に特撮の奥深さや鑑賞のポイントを語ってもらった。
                                                                                                 (聞き手・塩田芳久)

特撮の魅力と奥深さを語った三池敏夫さん=17日、東宝スタジオ(東京)
(c)TOHO CO.,LTD. (c)TOHO Studios Co., Ltd.

 -1954年公開の「ゴジラ」が、今も特撮映画として光を放つ理由は?
 「特撮は戦前から戦争映画に用いられていました。米映画『キング・コング』に影響を受けた円谷英二氏が『面白い映画をつくりたい』と、戦争映画で培った技術を生かして『ゴジラ』を手がけ、興行的に成功しました。海外でもヒットし、日本の特撮の素晴らしさが広まったのです」

 -日本の素晴らしい特撮技術はたくさんある。
 「筆頭はミニチュア特撮でしょう。CGがない時代、台本に書かれた架空の出来事の撮影を可能にするのがミニチュア特撮でした。技術者が1点1点精巧に作ったビルや船や車が怪獣をリアルに見せ、観客をスクリーンに引き込みました」

メカゴジラの撮影用スーツが並ぶ「特撮のDNA」の会場

 -九州のオールドファンは56年公開の「空の大怪獣 ラドン」で壊される福岡・天神のセットを思い出す。
 「後に特撮美術監督となる、古賀市出身の井上泰幸氏が尽力しました。美術助手として現地をロケハンし、実測して細部までこだわったミニチュア制作に当たりました。特技監督の円谷氏が望んだ以上の精巧さでした。その後、私も井上氏に師事したのですが『仕事は妥協するな。徹底的にやれ』と教え込まれました。特撮に携わる者に受け継がれる思いです。会場でも井上氏の業績をパネルで紹介しています」

 -しかし壊すためのミニチュア・セットを精巧に作るのは惜しくないか?
 「怪獣特撮映画のために作っているので、映像でかっこよく壊れてくれれば本望です。見せ場として機能すれば未練はないし、もったいないとも思いません。ちゃんと作ってちゃんと壊す、がモットーです」

 -DNA展で見逃せないポイントは?
 「CGがない時代に、創意工夫して怪獣を動かしていたことが分かってもらえると思います。映画の中では1体しか存在しないゴジラを描くため、さまざまな大きさのゴジラや、腕だけのパーツなどを準備して撮影していたことも伝えています。昭和と平成のメカゴジラの着ぐるみが2体並んでいますが、中に俳優さんが入って演技した実物です。火薬が破裂して煙がバンバン上がる中、ゴジラとの死闘を繰り広げました。そんな撮影の大変さを想像していただけたら幸いです」

みいけ・としお 
1961年生まれ。九州大工学部卒業後、特撮研究所(東京)に入社。特殊美術助手として東映の戦隊シリーズなどを手がけた。フリーになってからは「ゴジラVSモスラ」をはじめとするゴジラシリーズや平成ガメラ3部作、ウルトラマンシリーズなどの特撮作品で活躍。現在は特撮研究所に所属し人材育成、特撮技術の継承にも努める。

=(5月3日付西日本新聞朝刊に掲載)=

特撮のDNA―ゴジラ 特撮の科学展― 
14日まで。入場料は大人1400円、高校生1000円、小中生500円、未就学児無料。福岡市科学館=092(731)2525。

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