九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  インタビュー ›  「日常に非日常の色彩を」テキスタイルデザイナー、鈴木マサルの色柄マジック【インタビュー】

「日常に非日常の色彩を」テキスタイルデザイナー、鈴木マサルの色柄マジック【インタビュー】

Thumb micro 6693de0621
大迫章代
2017/12/27
LINE はてなブックマーク facebook Twitter

三菱地所アルティアムにて1/14まで開催中の「鈴木マサルのテキスタイル展 目に見えるもの、すべて色柄」。こちらは、Marimekko(マリメッコ)のテキスタイルデザインを手がけるなど日本でいま最も注目されているテキスタイルデザイナー、鈴木マサルさんの九州初となる個展。自身のブランド「OTTAIPNU(オッタイピイヌ)」や、Camper、UNIQLOとのコラボなどで、色鮮やかなハンドプリントを中心に独自のコレクションを展開する鈴木さんに、そのカラフルで心躍る「色柄」の世界について聞きました。

個展会場にてテキスタイルをバックに立つ鈴木マサルさん

Q:会場内のチラシ(RED、YELLOW、BLUEなど6種類が設置)の中に、「かつて色を使うのが苦手でまったく色感が鈍かった」という一文を見つけ意外でした。鈴木さんが、「色」に目覚めたのはいつでしょう?

会場内には各色に対する鈴木さんの想いやエピソードが綴られたチラシが

鈴木:多摩美術大学を卒業し、粟辻博(※)デザイン室で働いていた頃です。スタッフが、似たようなベージュでも、微妙な色合いの違いでどれを使うかの“色決め”しているのにまったくついて行けず、ヤバイと思い、色の勉強を始めました。それまでの僕は、色彩感覚がないというか、色を使うことから逃げていたようなところがありました。まずは恩師(故・粟辻氏)の教えで、単純にきれいだと思った印刷物などを目に見えるにように貼っておくようにしました。色感がいい人というのは、きっといろんな色に囲まれ、美しい色を多く見ている人のこと。それでも長い間、色には苦手意志が強くて。色使いを自分のストロング・ポイントだと思えるようになったのは、ここ10年ほどのことです。

赤、青、黄色と自在に組み合わされた色の世界

Q:鈴木さんが色使いでこだわっていることは?

鈴木:毎回違う色の組み合わせにチャレンジすること。一回やってうまくいった色の組み合わせはなるべく使わず、一回一回使ったことがない色を組み合わせて、なるべくたくさん色を使うようにしています。

Q:「柄」については、どうでしょう。植物や動物のモチーフが多いように思いますが。

鈴木:もともと動物のモチーフが好きということもありますが、柄については、それほどこだわりはないんです。ただ、無地じゃつまらない。僕は、色も柄も役割だと思っていて、リラックスしたい時には、リラックスできる色やモチーフがある。でも僕自身のブランドは「人の気持ちを高揚させるもの」というコンセプトでつくっているので、伝達力のある柄や、気持ちを盛り上げる色というものが、僕のテキスタイルにとっては欠かせません。

カラフルなテキスタイルには愛嬌たっぷりの動物モチーフも多い

Q:テキスタイルデザインに目覚めたきっかけがマリメッコとのことですが、マリメッコに惹かれた理由は?また、憧れのマリメッコと仕事をしている感想を聞かせてください。

鈴木:日本のテキスタイルデザインというのは、背景となることを前提とした無地的な物が多いのですが、マリメッコのデザインは色柄があって、むしろそれが主役であるようなものが多く、その生地が一体何に使われるのかさっぱり分からない。そんなテキスタイルの存在にまず驚いたと同時に、かっこいいなと思いました。一緒に仕事をしてみた感想は…実は今だに実感が無く、人ごとのように今でも思っています。コミュニケーションを含め、いろいろともどかしさや精神的なつらさもありますが、自分のテリトリーを出て、力を試す機会ということもあり、毎回いろいろ考えてデザインを提案しています。

Q:最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。

鈴木:もちろん、生活の中で長く使えるデザインや色というものはあるし、それを選ぶことは間違いじゃない。ただ、そればかりだと楽しくないし、生活がしょぼくれちゃう。きれいだと思ったものを素直に受け入れ、身の回りに置いたり、身につけたりする楽しさって、絶対にあると思うんです。たまに失敗したりもしますけど、それはそれでいいじゃないですか(笑)。今回の展覧会は、視界に入るすべてに「色」と「柄」があふれる、いわば「非日常」の空間です。そんな空間に身を置く機会はあまりないと思います。ですから、そういう「非日常」をちょっとでも「日常」に持って帰って、みなさんの生活が少しでも楽しくなると、うれしいなと思っています。

ファブリックや傘などカラフルなコレクションの中に身をゆだねていると、なんだか気分までポジティブになり、これまでは手を伸ばせなかったような「色柄」のアイテムを手に取りたくなるから不思議だ。期間中はOTTAIPNUのポップアップショップもオープン。もし、心惹かれる「非日常」を見つけたら、迷わず日常に持ち帰ってみよう。

※粟辻博…昭和・平成期に活躍したテキスタイルデザイナー。大胆で斬新な模様のテキスタイルを次々に発表し、日本のテキスタイルデザインを世界的な水準にまで引き上げた。

鈴木マサル 
1968年千葉県生まれ。多摩美術大学染織デザイン科卒業後、粟辻博デザイン室に勤務。1995年に独立。2002年有限会社ウンピアット設立。2004年からファブリックブランドOTTAIPNUを主宰。フィンランドのMarimekkoやLAPUAN KANKURITのテキスタイルデザインを手がけるほか、Camper、UNIQLO、familiar、Zoff、Arflex Japanらブランドとのコラボレーション、空間インスタレーションなど、その活動は多岐にわたる。

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini 0f54d98ee9
終了間近

特別展「生誕270年 長沢芦雪―若冲、応挙につづく天才画家―」

2024/02/06(火) 〜 2024/03/31(日)
九州国立博物館

Thumb mini 4db0098497
終了間近

『きみがいるから』原画展

2024/03/09(土) 〜 2024/03/31(日)
合同会社書肆吾輩堂

Thumb mini 06e57164b2
終了間近

『その怪文書を読みましたか』展

2024/03/16(土) 〜 2024/03/31(日)
hmv museum 博多

Thumb mini 1ac0126173

マルタ伝統工芸
ガヌテルアート展
ししゅう糸とワイヤーで作るマルタの花を楽しもう!

2024/03/25(月) 〜 2024/03/31(日)
アクロス福岡2F メッセージホワイエ

Thumb mini 662a82ff3e

朝日焼十六世 松林豊斎 茶陶展

2024/03/27(水) 〜 2024/04/01(月)
福岡三越4階「岩田屋三越美術画廊」

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini c9ec00cb40
コラム

お正月も展覧会へ!アート好きのための九州・山口エリア年始展覧会情報

Thumb mini ea9280df17
インタビュー

町田啓太さんにインタビュー! 音声ガイドを務める特別展「生誕270年 長沢芦雪」 九博で来年2月に開幕!

Thumb mini a8aef0aee6
インタビュー

【対談】㊤ 神に捧げた心と体 佐藤究さん(作家)×河野一隆さん(東京国立博物館)/「古代メキシコ」展、九州国立博物館

Thumb mini 00472e9c82
インタビュー

子ども驚かせるリアリズム メカデザインの〝レジェンド〟 宮武一貴さんに聞く 福岡市美術館「日本の巨大ロボット群像」展 松本零士さんとの思い出も【インタビュー】

Thumb mini 8994e4f42b
インタビュー

展覧会「ヨシタケシンスケ展かもしれない」が開催中! 絵本作家・ヨシタケシンスケさん【インタビュー】

特集記事をもっと見る