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アジ美で開催中『木梨憲武展』のポジティブなパワーと魅力に迫る【インタビュー】

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大迫章代
2020/02/05
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3月1日(日)まで福岡アジア美術館の企画ギャラリーA、B、Cで開催中の『木梨憲武展Timing―瞬間の光り―』。展覧会開幕前日、同会場で設営中の木梨憲武が、本展覧会の見どころや、作品制作の裏話を語ってくれた。

設営中の会場で取材に応える木梨憲武

 

―展覧会のタイトル「Timing」について

木梨「何事においても、タイミングがあると思います。それが急に来るのか、前触れがあって来るのかは分からないのですが、例えば、展覧会をさせてもらうことになって、その中で福岡での開催日が決まると、それに向かってスムーズに事が運んだり、いい絵を描けたりする。これは、ちょっと違う例えですが、銀行の前に駐車場待ちの車がずらっと並んでいるのに、自分がつく頃にちょうど車が出て、スムーズに入れたというような“タイミングのいい瞬間”の喜びを、その時の気持ちが何色なのかを含めて表現していきたいという思いがあります。」

「自分にとって“タイミングがいい瞬間”を表現していきたい」と語る木梨

 

ー本展では、「Flower」「OUCHI」「Mt.FUJI」「旅」「REACH OUT」「フェアリーズ」などのテーマで、約150点の絵画、ドローイング、映像、オブジェなどが展示される。福岡を含め、毎回会場レイアウトには、どんなこだわりがあるのだろうか。

木梨「会場ごとに天井の高さや壁の位置が違うので、毎回その会場に合わせた導線づくりが、自分の最後の楽しみになっています。自分一人だと結構迷ってしまうのですが、いつも、成美(奥様の女優・安田成美)さんに手伝ってもらいながら決めているので、今回もスムーズに決められました。アート展というよりは、『次は何?』というようなアトラクション的感覚でレイアウトしています」。

展示は「Flower」からスタート。タッチも色彩も違う様々な花の絵が並ぶ

 

ひと際目を引くのが 《感謝》2013年
大きなキャンバスに、繊細かつ華やかな花束が描かれている


ー特に注目したいのが「REACH OUT」シリーズ。20数年描き続けている“手”をモチーフにした作品たちだ。

木梨「(作品を指しながら)このあたりが「REACH OUT」というシリーズなのですが、お好み焼きソースとかケチャップとか、からしなどを入れる容器に、ちょうどいい硬さに溶いた絵の具を入れて描いた作品もあります。どれくらいの高さや角度から絵の具を出したらちょうどいいかなど、自分にとっても初めての体験で面白かったですね。いい意味で一発勝負なので、今後は、こういう作品をお客さんの前でライブパフォーマンスしながら作っていくような、イベントにもチャレンジしていきたいと思っています。」

一番右がケチャップやからしの容器に絵の具を入れて描いたという作品
《REACH OUT get!》2018年
手のモチーフとアルファベットがポップに描かれた
《のっ手いこー!REACH OUT》2007年


ー他にも、さまざまな出来事やそのつながりが、日時、場所とともに自在に描きこまれたマインドマップ的作品や、段ボールやおなじみの商品のパッケージなどで作られた不思議な妖精「フェアリーズ」シリーズなど、自由奔放な遊び心が詰まった作品がいっぱい。彼のアーティストとしての発想やインスピレーションはどこから湧いてくるのか。

木梨「基本的に、時間があれば自分の本拠地である麻布十番のアトリエにこもって作品を作っています。新しい画材や素材を見つけては、絵を描いたり、オブジェを作ったり、いつも一人遊びしながら楽しんでいますね。テーマに関しては、決めてから描くか、描きながら沸いてくるか、その行ったり来たりです。去年から本格的に音楽活動もしていますが、音楽もアートも作る過程は似ています。音楽は、何もないところから、いろんな人とのコラボで、音楽ができて、詩ができて、楽曲が出来上がっていく。一方、アートは、いろんな出来事とインスピレーションから線を描き、色を重ねていくことで、作品が出来上がっていく。そんな感覚です。」

いろんな出来事が繋がって、今がある。そんな瞬間をそのまま記録したような作品
《REACH OUT LONDONから・・・》2018年
巡回のたびに新たなメッセージが記されていく。
1つ1つ個性豊かな《フェアリーズ》がずらり
段ボールで作られた《フェアリーズ》

 

こちらは商品のパッケージ版の《フェアリーズ》。きっとあなたも作ってみたくなる!

 

ー中でも、油彩で描いた風景の上に木で作った小さな立体の家を並べたり、都会の街並みを人々が暮らすビルやマンションの窓をモチーフに描いたりする「OUCHI」シリーズには、彼の表現者としての自由さがよく表れている。

木梨「『自分だけの基地が欲しいとか、こんな部屋だったらいいな』という、幼い頃の童心に戻って作りました。木を切って、屋根を付けて、それに色を付けて…とやっているうちにどんどん発想が広がって、次は山に住みたいとか、海に住みたいとか。さらに、庭には川が流れていたらいいなとか、家の中の細かい作りも含めて、機会があれば、もっと細かいところまで作ってみたいですね。」

小さなミニチュアの“おうち”たちがなんともかわいい
《OUCHI‐光》2017年
大きなキャンバス2枚に描かれた《OUCHI‐街》2015年
こちらは木で作られたオブジェの《OUCHI。》

 

ーところで、奥様の安田成美さんは、具体的にどんなところを手伝っているのか。

木梨「絵を描いていて迷った時は、わざと完成した絵を家に置いておきます。そうすると成美さんが、『これ、かわいい』とか『これ、すごい』とかリアクションする日と、そうでない日がある。その反応の仕方から、『これは、できた』とか『これは、もうちょっと』という作品のゴールが見えてきますね。全くノーリアクションの時は、1回黒とか白を塗ってやり直しということも結構あります(笑)。成美さんは、美術大学で絵を描いていたということもあり、いわば審査員みたいな存在。直接アドバイスを聞いたりはしませんが、子供たちに話しているのを盗み聞きして、作品に取り入れたりしています。」

「REACH OUT」シリーズの前で

 

ー現在、家族5人それぞれの創作活動が始まっているという木梨家。「いずれ木梨家の展覧会をする予定は?」という質問に、「できたら面白いけど、それをやると、俺がやられる可能性がある。奴ら(子供たち)は体力ありますから」と笑う木梨憲武。
最後に、展覧会の楽しみ方を聞くと、こう答えてくれた。


木梨「僕の作品には、“悲しい”とか“寂しい”という作品はほとんどありません。これはよく聞く話なのですが、展覧会を見て家に帰ると、すぐ何か作り始める子供たちが多いそうです。展覧会をきっかけに、そんな風に図工の延長線で何かを作ってみるのも面白いと思います。また、作品には一応タイトルがついていますが、見て違うことを感じたらタイトルを変えてもいいくらい。見る人それぞれが、感じるままに楽しんでもらえたら嬉しいですね。」

 

アーティスト・木梨憲武の多彩すぎる才能に驚くとともに、見ているほうまで子供の頃の純粋な好奇心や遊び心を思い出してしまう「木梨憲武展 Timing―瞬間の光り―」。
本展の音声ガイドは、映画コメンテーターのLiLiCoさんと木梨憲武の掛け合いで笑いたっぷり(貸出価格:600円税込)。また、会場内は一部作品を除き、写真撮影が可能。ぜひ、会場にポジティブなパワーをもらいに行こう!

「木梨憲武展 Timing―瞬間の光り―」3月1日(日)まで福岡アジア美術館の企画ギャラリーA、B、Cで開催中
展示会場にある作品フォトスポット。
ここで記念写真を撮れば、あなたもノリさんと一緒にアート作品になれる!

 

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