高畑勲展
~日本のアニメーションに遺したもの~
2021/04/29(木) 〜 2021/07/18(日)
09:30 〜 17:30
福岡市美術館
秋吉真由美 2021/05/14 |
福岡市美術館(福岡市中央区)で特別展「高畑勲展 日本のアニメーションに遺したもの」が開催されています。演出の原点となった初の長編作品『太陽の王子ホルスの大冒険 』をはじめ、『アルプスの少女ハイジ』『赤毛のアン』『火垂るの墓』『おもひでぽろぽろ』、遺作となった『かぐや姫の物語』など数々の名作を残した、“絵を描かない”アニメーション映画監督・高畑勲さん。多数の絵コンテや背景画、未公開資料などを織り交ぜながら、“高畑演出”の妙に迫ります。
初の長編作品は、集団制作の仕組みを模索
高畑さんは1959年に東映動画(現在の東映アニメーション)に入社。第1章では、演出助手時代に手がけた『安寿と厨子王丸』(1961)、TVシリーズ『狼少年ケン』(1963~1965)などの貴重な絵コンテが並びます。
初の長編アニメーション初演出(監督)作品となった『太陽の王子ホルスの大冒険 』(1968)では、分業が当たり前のアニメーション制作の現場で、脚本の初稿のコピーをスタッフに配布して担当業務に限らず意見を求めるなど、当時では画期的な集団制作の仕組みを模索していたといいます。
当時では異例の海外ロケも敢行
東映動画を去った後、『アルプスの少女ハイジ』(1974)や『母をたずねて三千里』(1976)、『赤毛のアン』(1979)など、TVの名作シリーズを手がけます。第2章では、宮崎駿さんをはじめとするチームによる絵コンテや背景画などを展示。丁寧に日常を描く演出で名作を完成させました。
『アルプスの少女ハイジ』は、アニメーションでは初の海外ロケを敢行するなど、ここでも画期的なアニメ制作を展開します。大自然をそのまま描いた鮮やかな背景画は、時間を忘れて眺めてしまいます。
描く舞台は、日本へ
1985年に設立参画したスタジオジブリでは、『火垂るの墓』(1988)や『おもひでぽろぽろ』(1991)、『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994)など、日本を舞台にした作品を生みだします。
線や淡い色彩が生む躍動
第4章では、原作の描線を生かした『ホーホケキョ となりの山田くん』(1990)や8年の歳月をかけて映画化した『かぐや姫の物語』(2013)など、手描きの柔らかい水彩画タッチの世界観が広がる作品に注目。デジタル技術で手描きの水彩画のニュアンスを実現するという、世界でも例にない技法を、映像を交えながら紹介します。
かぐや姫が十二単を脱ぎ捨てて疾走する場面は、1枚1枚の原画と映像を見比べると線が持つ躍動感をひしひしと感じることができます。
常に新しい表現を求め、何度も議論を重ねていく、正解のない創作に向けるその姿勢に感服。個性的なキャラクターと推敲されたストーリー展開。幅広い世代に愛される作品の舞台裏がのぞける展覧会です。
開催は7月18日まで。
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