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街並みごとの再現展示で臨場感! テーマパークのような「バンクシーって誰?展」福岡展が開幕!

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アルトネ編集部
2022/12/19
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 正体不明の覆面アーティスト・バンクシーの謎に迫る「バンクシーって誰?展」福岡展が、福岡アジア美術館(福岡市博多区)で始まりました。東京、大阪など全国5都市で約50万人を動員した話題の展覧会もここ福岡が最終開催地。これは見逃せないと足を運んでみたところ、ただ作品を並べるだけではない、リアルな再現展示だからこそ、バンクシーがなぜその場所を選び、作品を描いたのか、伝わってきました。

バンクシーって誰?
 2018年、少女と赤い風船を描いた作品がオークションで高額落札後に、額に仕込まれたシュレッダーで裁断されたというニュースで、バンクシーの存在を知った方も多いかもしれません。
 そもそもバンクシーはある日突然、街角の壁面などに作品〝グラフティ〟を発表する神出鬼没のストリート・アーティスト。活動範囲はイギリスやアメリカ、中東など世界中にわたる一方で、人物像はもちろん、創作の全貌や動機など、その真相は謎に包まれたままなのです。
 

活動の拠点はイギリス
 エントランスを抜けてまず迎えてくれるのは、現在はなくなってしまった《Spy Booth》。これはイギリス・チェルトナム市の諜報機関GCHQ(英国政府通信本部)付近の建物に、本物の電話ボックスを取り囲むように描かれていたのだとか。国家の監視活動への批判と考えられています。現地で見られない作品もこの展覧会ではじっくり観察できます。

Spy Booth

 さらに、新型コロナウイルス禍の2020年12月にバンクシーの故郷ブリストルの急な坂道に出現した《Aachoo‼》。日本語で「ハクション‼」。よく見ると、スカーフを被った女性の口からくしゃみと一緒に入れ歯が飛び出しています。マスクを付けずに飛沫やウイルスを拡散することへの警鐘だそう。

Aachoo‼

アメリカでも意欲的に活動
 バンクシーは2013年、ニューヨークの街角に毎日1作品を描き、インスタグラムに投稿するプロジェクトを実施。その中で描かれたのが、《Hammer Boy》。実際に設置されている消火栓をハンマーでたたき割ろうとしている少年のシルエットです。

Hammer Boy

 ある程度制作活動を公表しても、大掛かりな作品を描いても、その姿はなぜ見つけられないのでしょうか。鍵はバンクシーの手法にあるようです。だれにも知られず短時間で作品を完成させるため、多くの作品で型紙を使ってスプレーなどを吹き付ける〝ステンシル〟という技法を用いています。

 会場を進むと、ひときわ派手な象が展示されています。アメリカで初となる大規模な個展で発表された《Barely Legal》。英語の慣用句にならって「問題があっても誰も触れなようとしない」という意味が込められているそうです。

Barely Legal

中東では平和への願いを込めて
 中東エリアでは、さらに社会的メッセージを感じ取ることができます。展覧会のキービジュアルにもなっている《Flower Thrower》。5メートル近くある大きな作品です。抗議する男性の手には火炎瓶ではなく花束が描かれ、憎しみではなく平和を願う思いが込められています。

Flower Thrower

 パレスチナ・ガザ地区の廃墟にはかわいらしい子猫《Giant Kitten》を描きました。廃墟と子猫のギャップで現地の窮状を伝え、世間にもっと関心を持ってもらいたいという意図があったとされています。

Giant Kitten

 この展示では壁の裏側に回ることもできます。銃弾の跡が残る壁の裏には、洗濯物が干してあり、そこには人々の普通の暮らしがあったことに気づかされます。

貴重な個人コレクションも
 リアルな再現展示のほか、めったに見ることができない個人秘蔵のコレクション約60点も必見です。
 その一つが、バンクシー好きで知られるデザイナーのポール・スミス氏秘蔵の油彩画《Congestion Charge/コンジェスチョン・チャージ》。のみの市で販売されていた無名の画家が描いた作品にバンクシーが少し描き加え、まったく別の意味に仕立てているのでチェックしてみてください。

Congestion Charge

楽しい仕掛けとプロの技
 再現展示では細部にわたるこだわりも。ストリートならではの小道具や落ちているゴミ、金属のさびなど、映画やドラマを制作するテレビ局スタッフの高い技術力にも注目です。

たばこの吸い殻や空き缶なども見事に再現

 街中の雑踏が感じられる音も会場に流れていて臨場感もアップ。そして、音声ガイドは俳優の中村倫也さん。穏やかな優しい声で一緒にバンクシーの謎に迫ります。
 会場内には各所でバンクシー作品の象徴的存在でもあるネズミのシルエットが登場します。どこに現れるか、ぜひ見つけてください。

 バンクシーの作品を通して、ロンドン、ニューヨーク、ベツレヘムなど世界中をめぐってきました。まるで映画のセットのように、街並みに没入できる体験型だからこそ、その場所が選ばれた意図、作品に込められた思いなど背景がわかってくる興味深い展覧会になっています。
 バンクシーって誰? 答えを探しに出かけてみませんか。
 
 チケットは、ARTNEチケットオンラインで発売中です。ARTNEチケットオンラインはこちら。

「バンクシーって誰?展」福岡展
【会期】 2022年12月17日(土)~2023年3月26日(日)
【会場】 福岡アジア美術館(福岡市博多区下川端町)
【開館時間】 10:00~18:00(金曜・土曜は20:00まで)
       ※入館は閉館30分前まで
【休館日】 水曜
【年末年始休館】 12月26日(月)~2023年1月1日(日)

展覧会の公式サイトはこちら

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