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福岡アジア美術館 アーティスト・イン・レジデンス 2023 「アーティスト・トーク:チェン・ウェイチェン×古賀義浩」レポート

2023/12/05 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 福岡アジア美術館では、1999年の開館当初から、毎年アジアの美術作家や研究者を招いて一定期間滞在していただき、市民との共同制作やワークショップ、トークなどをとおして交流をおこなう「アーティスト・イン・レジデンス事業」に取り組んできました。こうした交流により、アジアの美術と文化の理解を深める機会を提供し、アジアの美術交流拠点となることを目指しています。2022年より、Fukuoka Art Next(FaN:彩りにあふれたアートのまちをめざす福岡市主催の事業)の一環として、アジアのみならず、国内外から公募した年間8~9組のアーティストが、Artist Cafe Fukuoka(中央区城内)のスタジオで制作に取り組んでいます。

 現在、2023年度第Ⅱ期の参加アーティストとして、2組が10月からの3カ月間滞在制作活動を行っています。チェン・ウェイチェン[陳為榛](台湾)は、福岡の街や文化を知り作品へ取り込むためのリサーチ活動へ出かけたり、古賀義浩(福岡)は制作に加え、一般参加のワークショップを開催するなど、12月9日(土)から始まる成果展へ向け目まぐるしい滞在生活を送っています。

 そんな2人が10月14日のアーティスト・トークで話したことをもとに、福岡でどういった作品を制作しているのかについてご紹介いたします。

チェン・ウェイチェン:路地の風景をもとにインスタレーション作品を生み出す 

 チェン・ウェイチェンさんは、レジデンス事業が盛んな台湾の出身。自身も他国で制作をしたいという希望を抱いての参加で、今回がキャリア初の海外レジデンスです。
 これまで、平面的なものが立体的に見えるようデザインを施した作品や、高級な素材でしか普通は制作しないようなものをあえてありふれた素材で制作した作品など、構成する要素同士の組み合わせ自体が疑問を投げかけるような、鑑賞者の観念を揺さぶってくるような作品を送り出してきたチェンさん。台湾の様々な場所を訪れ、作品のインスピレーションを得てきたのですが、特に強い興味を抱いたのは、歴史的な建築のデザインに見られる西洋文化とアジア文化の融合や、個人の持ち物や生活が垣根を越えて路上に溢れ出したような風景でした。
 福岡でもさまざまな場所を訪れてきましたが、福岡の景色の中に台湾と日本の違いを感じることはもちろん、意外な共通点を発見したり、「日本の路地はこんな感じだろう」という先入観を打ち破るような光景に出くわすこともあるとのことで、独特の視点と福岡の市民生活が融合した新たな作品が生まれそうです。
 チェンさんは今年の「博多灯明ウォッチング・リバレイン灯明」の地上絵のデザインも担当し、レジデンス・アーティストとしては過去最多となった5,000個以上の灯明で《ネオンの夜》を描き、福岡で見たいろいろな文字を川端の夜に輝かせました。

WEBサイト(中国語):https://cargocollective.com/amigo_Chenweichen
福岡アジア美術館レジデンスページ:https://faam.city.fukuoka.lg.jp/residence/18338/

■古賀義浩:セメントを使って個人や地域のヒストリーをテーマに造形する

 古賀義浩さんは、福岡県久留米市の出身。粉状セメントを固めたり、積み重ねたりして有機的なものを形作ってきました。久留米の実家がセメント工場を営んでいたという古賀さんは、これまでその工場で出た廃材を利用した作品を制作するなど、自身が育った環境で生まれたものを作品の中核部分に取り込み、パーソナルな地域性を作品の重要な要素としてきました。
 今回のテーマは古賀さんの祖母が語る、戦前からの久留米や家族が歩んできた歴史です。古賀さんが祖母からその歴史について話を聴いたのはごく最近のことで、それまで生まれ育った場所の歴史についてあまり知らなかったことに気付きました。ローカルな歴史について学校で教えられたこともなく、個人的にしか語り継がれていないことに問題意識を感じたそうです。
 また、滞在中に開催していた「語る、聞く、表現する」ことを体験するための、誰かが見た夢の内容を3Dペンで描くワークショップで参加者が制作したものも作品で使用するとのこと。
 セメントが水で固まる現象を利用する技法と作品を紹介しながら、アーティストとして制作する上での考え方についても話されており、どのように制作が進み、12月にどういった作品が出来上がるのか非常に楽しみです。

ウェブサイト:http://www.yoshihiro-koga.com
福岡アジア美術館レジデンスページ:https://faam.city.fukuoka.lg.jp/residence/18346/

■制作活動を発信
 制作活動の様子は、レジデンス事業のコーディネーターが更新するInstagramや、福岡アジア美術館ウェブサイトの交流日記でご覧いただくことができます。12月9日(土)からの展覧会がどういったものになるのか、レジデンスならではの活動の数々にもぜひ注目しながら、楽しみに開幕をお待ちください。

第20回アーティスト・イン・レジデンスの成果展 風景断想―痕跡と記憶をとおして
https://faam.city.fukuoka.lg.jp/exhibition/19602/

福岡アジア美術館アーティスト・イン・レジデンス スタジオ(Instagram)https://www.instagram.com/faam_air/

福岡アジア美術館(Instagram)
https://www.instagram.com/fukuoka_asian_art_museum/

福岡アジア美術館アーティスト・イン・レジデンス事業についてhttps://faam.city.fukuoka.lg.jp/residence/

                (福岡アジア美術館 広報担当 石橋祐太郎)

 

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