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【レポート】リアルな表現ってどういうこと?レポート不可能な超絶リアリズムの世界/福岡アジア美術館

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アルトネ編集部
2024/09/11
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 9月7日(土)に開幕した「ホキ美術館所蔵名品展~超絶リアリズム絵画」。写真と見まがうばかりの「リアル」な写実絵画が集められたホキ美術館の名品が堪能できるということで、会場の福岡アジア美術館に取材に出かけました。

 なお、会場は写真撮影禁止。今回は特別に撮影許可をいただき紹介しますが、安心してください。写真ではその素晴らしさを記録する事はほとんど不可能です。本展の核心は実際の作品に向き合わないと触れることはできません。本レポートでは精一杯、鑑賞の手がかりになるように頑張ります。

 会場には数多くの作品が展示されていますが、独断で印象に残った作品を絞って紹介します。まずは会場入り口でパチリ。ホキ美術館の看板猫である藤原秀一作「萩と猫」の巨大看板がお出迎え。

キリリとした猫の表情と、もふもふの毛並み、美しい萩の花が印象的な作品です。

 会場を進んでいくと、福岡展のメインビジュアルのひとつである島村信之作「日差し」が目に飛び込んできます。

  

 この作品は、柔らかな陽ざしが差し込むなか、横たわる女性がウトウトとまどろんでいるのか、ふっと気を抜いてリラックスしているのか、いずれにしてもその一瞬を切り取った作品なのですが、まるで画面からその息遣いが伝わってくるかのよう。よく見てみると、おでこの部分には皮膚の微妙な肌合い(細やかな皺)や、胸骨付近の窪みの表現まで精密に描かれています。陽ざしに照らされた産毛まで感じられる作品です。

 生島浩作「5:55」は「日差し」と同じく女性の表情が印象的なのですが、こちらはむしろ瞬間の表情を永遠に切り取ったかのような静謐な空間が描かれています。「リアルに作品を描く」という共通点はあれど、描かれた世界は全然違っていることがわかります。

会場には超絶的な技法で描かれた風景作品が展示されていますが、印象的だったのは青木敏郎作「プロバンスの農家」という作品。雄大な風景が描かれている作品です。

展示された作品を見ると「うおー、本当に写真みたい」とまず感想を抱いたのですが、作者による解説文には「ディテールを描きこみすぎないようにするが、浅くならないように」のような記載が。描きこみすぎない超絶技法…。ただ精密に、緻密に描写するのではなく、表現の深さを表現する…「リアル」とは何かを追求する、その作家の姿勢には脱帽します。

本当にリアルにも色々あるんですね。

会場に来られたお客様を見ても、本当に老若男女、様々な年齢層、性別層のお客様が来場されています。共通して言えるのは「鑑賞時間が長いこと」。2時間以上鑑賞されている方も珍しくないそうです。じっくり作品世界に没入されていらっしゃいました。

 なお、最後に紹介するのは原雅幸作「モンテプルチアーノ」。この作品、個人的には本当に好きで、ぜひ紹介したいのですが、とても撮影ができませんでした(筆者の写真撮影が下手ということもありますが)。作品の印刷物やプレス画像を掲載しても、この迫真性は伝えられないと思い、あえて画像を掲載しておりません。作品はぜひ会場でご覧ください。

 本展で紹介する超絶・リアルの世界は、会場でしか体験することができません。ぜひ福岡アジア美術館まで足を運んでいただき、作家ひとりひとりが「真」に迫るための驚きの技法や真実に迫るアプローチを感じて下さい。

◇◇

「ホキ美術館所蔵名品展~超絶リアリズム絵画」は10月13日まで。福岡市博多区下川端町の福岡アジア美術館。

公式ホームページはこちらから→ホキ美術館所蔵名品展~超絶リアリズム絵画~|イベント・試写会|TNC テレビ西日本

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