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【レポート】演劇とアートを一緒に楽しめる人気企画!公開レビュー&ヤノベケンジさんの巧妙トーク!

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伊勢田美保
2017/06/09
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今回モチーフとなる北九州市立美術館所蔵の《GRAND SEED NEW “ORGA”》。
ユーモラスな外観と実機能を兼ね備えた大型彫刻がヤノベケンジ独特の世界観を醸し出す。

北九州市立美術館が所蔵する作品をモチーフに演劇作品を創作し、観劇と作品鑑賞を一度に楽しめるという、なんとも贅沢なコラボレーション企画。これまで上演した4回のほとんどが前売完売という人気企画の第5弾が、6月8日(木)〜11日(日)の4日間にわたり上演されている

今回は現代美術家・ヤノベケンジの《GRAND SEED NEW “ORGA”》(以下、《ORGA》)を中心にストーリーが展開。これまでの1本上演スタイルとは異なり、劇作家3人による短編をオムニバス形式で上演し、《ORGA》に着想を得た異なる3つの演劇世界が楽しめるのも魅力だ。

上演に先立ち6月4日(日)に北九州市立美術館分館で行われた公開プレビューでは、短編1作目と2作目の公開稽古と、ヤノベケンジさんと作・構成・演出の泊篤志さん、監修・解説を担当する北九州市立美術館学芸員の清田幸枝さんによるトークショーが開催された。会場には開演を待ちきれない多くの演劇、美術ファンや、ヤノベファンが詰めかけた。その模様を一部、ご紹介する。

 

ヤノベさんの創作の軌跡から<サヴァイヴァル><リアリティ><リヴァイヴァル>という3つのテーマで創られた短編3作のオムニバス作品。舞台中央には、3作通して物語のキーとなる《ORGA》が。白い布にその姿を隠しながらも、たっぷりの存在感。

さっそく始まった1作目の公開稽古。舞台は、戦争真っただ中という設定の、近未来のとある研究所。“夢エネルギー”で世界を救うという夢を持つ博士と研究所員のコミカルなやりとりが続く。

白い布をバサッと剥ぎ取られ、高さ3mの巨体を現した《ORGA》。これが“夢エネルギー”を発生させるのか?

 

続いて2作目の舞台は山奥。リュックを背負った男女が《ORGA》を見て第一声。「あ、あったあ〜〜“洗濯機”!」思わぬ展開にえ!?と会場からは笑いが。さらに話が進むと「やっぱり“悟り開き機”なんじゃない?」と、話はやや宗教がかった方向に…。一体この先、どう進んでいくのか!?

役者の躍動感の中では、美術作品でさえも生きているかのよう。

謎すぎる展開に、客席のもっと見たい!気持ちが高まったところで、約30分の公開稽古は終了。続いて、本企画の1回目から演出を担当しており、今回も全体の構成・演出と3作目の脚本を担当した泊篤志さんと、本企画の監修・解説を行う北九州市立美術館学芸員の清田幸枝さんによる、ヤノベケンジさんをお迎えしてのトークショーへ。

 

まずは泊さん、清田さんのお二人によるイントロともいえるお話から。

今回ヤノベケンジさんの立体彫刻作品《ORGA》をモチーフに選んだ理由として清田さんは、「いま現在も第一線で活躍する“現存作家”とのコラボを実現させたかった」と語り、「作品自体にストーリー性とキャラクター性を持つヤノベさんの作品に、演劇を絡めたら面白い見方ができそうだと感じた」と、経緯を話してくれた。

泊「《ORGA》を常設展示している本館からこの分館まで持ってくるのが大変だったと聞きました」
清田「トラック4台で運びました(笑)搬入経路を通らないのではないかと直前までヒヤヒヤで…」※搬入の様子は、劇場の公式Twitterで公開中

また清田さんからの今回どうしてオムニバス形式にしたのか?との問いに泊さんは、「自分以外の劇作家にもこの企画で作品作りをしてほしかった。」「今後は今回のように《ORGA》を北九州市立美術館本館から動かさずとも、作品を常設展示したまま、その周辺で気軽に再演ができるように、各20分ほどの短編にした」という意図を打ち明け、会場でプレビューを見守っていた一作目を担当した劇作家・穴迫信一さんと、二作目を担当した渡辺明男さんも紹介された。

 

そしていよいよ、ヤノベケンジさんの登場。

「あ、こんにちは。“現存作家”のヤノベケンジです。」との挨拶に、会場爆笑。

ヤノベ「“現存作家”って言いますかね?現存…」

清田「ご本人前を前には言わないですかね…」

ヤノベ「ま、公演初日までにどうなるかわからないですけどね…」

泊「怖い怖い!」

清田「(笑)。さて、今日初めて稽古を見ていただいたわけですが。自身の作品と演劇のコラボを見て、いかがでしたか?」

ヤノベ「いや、びっくりしました。僕の作品の変遷を3つに分けて演劇の中に取り込んであって、解釈も素晴らしいですね。

自分の作品を演劇の舞台装置として使われるのは僕以外でもあまり存在しないパターンじゃないかな。普通は“美術品”って触るのも恐れ多いですからね。さっき、ベタベタ触ってましたけどね、布とかバサッて剥いだり(笑)。これよく美術館は怒らないよね。まあそこは“現存作家”だからか…(会場爆笑)」

泊「ヤノベさんが何をやってもいいっておっしゃったから…!」

ヤノベ「そう。壊れたら自分が修理できるからね(笑)。でも僕はすごく感激していますよ。やっぱり役者さんの演技が入ると、空間も作品もイキイキしていますね」

「《ORGA》はエンジンも動くし、中に人が入ってこその作品でもある。鉄骨でしっかり作っているから、上に登ってみたりしては?」と作品の活用法を積極的に提案するヤノベさんにタジタジのお二人。

さらに話は膨らみ、脚本も《ORGA》とともに美術館に所蔵しては?という話に。

ヤノベ「この芝居の脚本自体も、《ORGA》の延長上に位置づけられる作品。演劇も収蔵作品のように扱われて、10万年後もチェーホフとかシェイクスピアくらいに残っていったらいいですよね」

泊「演劇作品ってあまり所蔵するって感覚がないので、面白い考えですね」

ヤノベ「そしたら“現存作家”としては嬉しいなあ。きっと本番でもさらにすごいことになってますからね。《ORGA》の動かしちゃいけないところを動かしてみたりとか・・(にやり)」

動かしていけないところはさすがに動かさないものの、本番では、《ORGA》に備えられたさまざまなギミックを稼働する予定とのこと。また《ORGA》のほかにも、ヤノベさんからお借りした、芝居用の特注アトムスーツも劇中で使われるそうだ。

こちらも会場に展示されている《アトムスーツ・プロジェクト》の2つのライトボックス(北九州市立美術館蔵)。

ヤノベ「早く続きが見たいな。どう仕上がっているか、何が起こるか、ドキドキしながら来たいと思います。初日はアフタートークにも出席するし、9日10日も来られたら来たいです。ま、“現存の”ヤノベさんか、わからないけどね(笑)」

 

最後はヤノベさんの巧妙な締めで、会場は一層大きな笑いに包まれた。

 

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