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【連載】山出淳也 アート、まちに出る 5

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山出淳也
2020/12/15
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アーティストになるために

 宮島達男さんという先輩から「アーティストは職業じゃない、生き方なんだ」と言われたことがある。テレビで偶然見た石を彫る男性に影響を受けて唐突に高校を辞めると言い出した僕に、高校の先生は「アーティストになるには資格がいる」と言ったが、一時(いっとき)したらそれが説得の文句だとさすがに気がついた。そう、アーティストは専門教育や資格が必要ではない。結局、僕は専門的なアートの教育を受けていない。「今日から俺もアーティストだ」と、ある日名乗って今に至る。問題はそれを続けていけるかってことだ。

 19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの画家アンリ・ルソーは税関の職員を務め仕事の余暇に絵を描いた。つまり日曜画家だ。大学で教壇に立ちながら国際的に活躍する日本人アーティストもたくさんいる。割合として多いとは言えないがアート活動だけで生計を立てる人もいる。鑑賞する僕たちはそんなことはどうでもよくて、純粋に作品が面白いかどうかで判断する。そういうことで皆さん、「今日から俺も」ってどうですか?

 とは言え、自分には才能がない、絵心がないからと考えるのもよく理解できる。あんなに美術にアレルギーがあった僕が、これまでアート活動を続けてこられたのは、飢えや乾きにも似たエネルギーが枯れなかったからだ。世の中のアーティストは、始めた時と同じ気持ちで、もしくはそれ以上に没入して時を過ごす。

 つまり、スタートは誰もそんなに変わらない。才能が溢(あふ)れまくってアーティストになるしかなかったって人も知っているが、ほんの一握り。右も左も分からないながら、本を読んで学んだり、展覧会を見て仲間と話したり、先輩の手伝いをして覚えたり、そしてたくさん自分の作品と向き合う。だからといってすぐに良い作品ができるわけでもなく、情熱を持ち諦めずに制作を続ける日々を送る。

 そうやって考えると、アートを介すことを別にすると、行為としては他のどんな職業ともそんなに変わらない。唯一違うのは、アートは「自分起点」ということだ。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(11月6日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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