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福岡アジア美術館
山出淳也 2020/12/01 |
アートを活用した地域づくりに取り組む大分県別府市のNPO法人「BEPPU PROJECT」代表理事の山出淳也(やまいで・じゅんや)さんの連載「アート、まちに出る」が始まります。
山出さんは1970年、大分市生まれ。高校卒業後から現代アート作家として、欧米を中心に海外で活動を展開し、「台北ビエンナーレ」などの国際芸術祭に参加してきました。2004年に帰国し、別府で活動を始め、別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」の開催や、中心市街地の遊休施設を文化拠点として運用する事業など、多様な活動を展開してきました。
随筆ではアートと社会をつないできた手探りの活動の歩みを振り返り、等身大の表現でつづります。イラストはアーティストの鈴木ヒラクさんが手掛けます。ご期待ください。(編集部)
筆者の言葉
アートになんて興味がなかった。絵を描くことも大の苦手。そんな僕がアーティストになり、後にNPO法人を運営していくなんて夢にも思わなかった。アートの力を借り、地域や企業の課題と向き合ってきた30年間を振り返ったとき、僕を救ってくれた言葉や、もたらされた気づきの数々を思い出す。この連載は、アート的思考術を身に付けながらサバイバルしてきた僕の冒険記。アーティストたちの生の言葉とともにお届けしたい。
ある時ふとこう考えた
アートになんて全く興味がなかった。
正直に告白すれば、絵を描きたいなんて、これまで一度たりとも考えたことがない。それが今、「社会にアートが必要だ」なんてことを恥ずかしげもなく書こうとしているのだから、人生何が起こるか分からない。
大阪万博の年に生まれ、今年50歳になった。思春期の頃、いい歳になれば立派な大人になっているに違いないと考えていた。節目節目で「少しは自分の物差しを持てたか?」と問うてきたが、いまだ何も得られず。目の前のことに追われ、どこにたどり着くのか分からない日々がずっと続いている。
霞(かすみ)がかかる未来を模索し、実感したくて手を伸ばすが一向につかめない。つかめないからまた、手を伸ばす。その繰り返し。さすがにもう諦めもついてきて、ぼんやりした遠い未来を占うよりも、霧がかかって見える理由を考えるようになった。そして、見えないながらも歩む術を身につけようと考えた。アートとは何かなんて分からないけれど、アートがあることによって、どうなるのか考えるようになった。
技術革新が進み随分便利になった。海の向こうのニュースも瞬時に手に入る。物凄(ものすご)い速度で世界の均質化が進んでいる。分からないことを恐れ、全てを明らかにするために隅々まで照明を当てようとする。小学生の頃、世界の謎について書かれた雑学書を買ってもらった。無我夢中で読み進めた。正しいのかどうなのか分かりやしないが、知らない何かを想像することが好きだった。
いつの間にかそういう気持ちも薄れ、教科書に書かれている情報を詰め込むことに精いっぱいになる。「分からない、知らない」と発することが恥ずかしくて、キーボードをたたき検索する。たくさんの知識と引き換えに大切なことを失いかけていたある日、ふとこう考えた。
「世界には想像力が必要だ」
未来は占えないけれど、創(つく)ることはできる。アート的な思考術によって、地域や企業の課題と向き合ってきた奮闘記をお届けします。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)
=(11月2日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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