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【連載】山出淳也 アート、まちに出る 26

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山出淳也
2021/03/04
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続けること

 こんなに長く別府市で活動を続けるなんて、考えてなかった。

 パリで新聞を読み、帰国した2004年。一度だけ芸術祭というものを開催したら、またヨーロッパに戻るものだと思っていた。

 当時の僕は、アーティストとして生きていくことしか想像できなかった。どこかで別府での活動は本来のアーティストの仕事ではない、少し長い休暇みたいなものだと考えていた。そう言い聞かせていたのかもしれない。

 フランス・ナント市のボナンさんから聞かれたことがある。「君の仕事場はどこだ?」。彼はかつてパリで僕の作品を見ていたから、「アトリエは今はない。この活動が忙しくて」と答えた。「そうじゃない。君は今、何者だ?」と聞く。僕はその問いにうまく答えられなかった。その晩眠りにつく頃、僕は「アーティストがすべきことって何なのだろう」と考えた。「作品を作ることではないのか?」。一晩悩んだ。

 芸術祭『混浴温泉世界』は作品が町に点在している。屋外にも展示した。観客は地図を片手にそれらを巡る。そして僕も、会期中のある日それぞれの会場を巡回していた。サルキスさんの作品を設置している神社にたどり着いた。当初の構想を変えた新たな作品は、テレビでも大きく紹介された。

 老婦人が数段ある階段を上ろうとしていた。「作品を見に来られたんですか?」と声をかけ、手を差し伸べた。「ありがとう。テレビで知って一体どんなものか見たくて」と彼女は言った。サルキスさんが何を考え、この作品に至ったのか伝えた。感心しながら彼女は「来年もまたするの?」と聞いた。「いや、それは…」と口籠っていると、「来年の春、別府に帰って来るわね」。そう僕に告げ、彼女は去っていった。

 僕は続けることの意味を実感した。僕だけではなくて、誰かにとっても見たい風景に変わったんだと感じた。僕自身は作品を作らないけど、アーティストの力を借りて異なる未来を創(つく)る。それが僕の仕事だとそのとき理解した。そうして僕は今でも別府で活動を続けている。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(12月8日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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